増えた10月分・11月分が12月15日に振り込まれる

65歳以降継続して厚生年金に加入している昌行さんは、当然2025年9月1日時点で厚生年金被保険者です。今回在職定時改定の対象となり、65歳になった月(2024年11月)から2025年の8月までの10カ月分の被保険者期間分が足され、2025年10月分から年金が増えることになります。昌行さんの場合、10カ月分掛けた結果、年額で見て1万2000円ほど増えました。

そして、年金は偶数月の15日に前々月分と前月分が振り込まれることになっています。10月分と翌11月分の年金は12月15日に支給され、今回2025年12月15日の振込分で増えたことになります。12月15日に振り込まれ、増えた額の2カ月分は2000円(1万2000円×2カ月/12カ月)程度となります。今後、昌行さんが引き続き厚生年金に加入し続ければ、毎年その年の8月分までの加入記録をもとに在職定時改定が行われます。次回来年の在職定時改定では2025年9月分~2026年8月分の12カ月分の加入記録が追加されて2026年10月分からの年金が増えることになるでしょう。

在職定時改定以外に、退職すれば退職時にもそれまでの加入した期間でもって再計算されて、老齢厚生年金が増えることにもなります。また、厚生年金への加入は70歳未満が対象のため、70歳になるまで勤務すると70歳になった時にも再計算されます。これらについては2022年の法改正前からあります。

増えた年金が生涯続く

年金の受給を始めて以降の厚生年金加入期間が受給額に反映されると、その増えた年金が生涯続きます。退職して給与の収入がなくなった後も、増えた年金を受給し続けられることになるでしょう。

在職定時改定制度が始まる前は退職時か70歳到達時を待たないと再計算されませんでした。65歳から70歳になるまで勤務を続けると、70歳になった当時60カ月分の再計算が行われる仕組みでした。しかし、在職定時改定制度が始まったことにより、毎年1回少しずつ保険料を掛けた分の老齢厚生年金が増えることになったのでした。「払った保険料が掛け捨てにならずに毎年ちょっとでも年金が増えるならいいな」と制度について理解し、納得した昌行さん。引き続き頑張って働くことにしたのでした。

65歳以降働く人はますます増えていく中、「年金の受給者でありながら年金の加入者である人」も増えることでしょう。保険料が掛け捨てにならない点を確認し、在職定時改定など年金の再計算のルールも把握しておくのがよいでしょう。 

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。