各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、静銀ティーエム証券のデータをもとに解説。
静銀ティーエム証券の投信売れ筋(販売額)ランキングの2025年9月のトップは前月同様に「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」だった。第2位は前月第3位だった「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:ポラリス)」が上がり、第2位だった「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(年1回決算型)」は第3位に下がった。「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は前月の第5位から第4位に上がった。一方、前月第9位だった「netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」は第6位にジャンプアップし、トップ10圏外から「サイバーセキュリティ株式オープン(為替ヘッジなし)」が第8位に、「フィデリティ・欧州割安成長株投信 Bコース(為替ヘッジなし)」(愛称:テンバガー・ハンター・ヨーロッパ)が第9位にランクインした。
テック株ファンドの復調
静銀ティーエム証券は、静岡銀行を核とする「しずおかフィナンシャルグループ」の証券会社だ。売れ筋トップ10には、「テーマ型」ファンドといえる性格がはっきりとしたファンドが比較的多い。9月のトップ10で目立っているのは、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」、「netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」、そして、「サイバーセキュリティ株式オープン(為替ヘッジなし)」といったテクノロジー株式に軸足を置いたファンドだ。
「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」は、特定の業種やテーマに投資対象を絞った「テーマ型」ファンドではないが、「米国の成長株」に投資するというコンセプトから、現在の市場においては必然的にテクノロジー株になっている。2025年9月末時点の組み入れ上位10銘柄は、「エヌビディア」「マイクロソフト」「アマゾン」「アルファベット」「メタ・プラットフォームズ」「ブロードコム」などIT(情報技術)やコミュニケーション・サービスに関連する企業が並ぶ。
「netWIN GSテクノロジー株式ファンド」は文字通り、テック株の王道に投資するファンドだ。9月末時点の組み入れ上位6位までの銘柄は「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」と同じ。「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」では第7位に金融の「ビザ」、10位に生活必需品の「モンスター・ビバレッジ」が入っているが、「netWIN GSテクノロジー株式ファンド」は7位以下も「TSMC(台湾半導体)」「アップル」「ネットフリックス」「モトローラ・ソリューションズ」というテック企業が並んでいる。
そして、「サイバーセキュリティ株式オープン」は日本を含む世界の株式市場からサイバーセキュリティに関連する優れたテクノロジー企業に投資するファンドだ。AIの発展によって、IOT(モノのインターネット)などデジタルネットワークが一段と拡大する方向にあり、そのネットワークの拡張にともなってサイバーセキュリティの重要性はますます高まる方向にある。9月末時点の組み入れ上位は「クラウドフレア」「クラウドストライク・ホールディングス」「ブロードコム」「パロアルトネットワークス」「ルーブリック」「バロニス・システムズ」など、上記の2ファンドとは趣が異なり、ソフトウエア中心の銘柄群になっている。
このようなテクノロジー株式への投資は、2024年末までの米国株式市場の人気銘柄を踏襲した動きともいえる。2025年になって4月に株価が急落した時にはテクノロジー株式への集中投資が反省されたものの、その後の株価回復、そして、史上最高値更新という上昇によって、再びテクノロジー株式への傾斜が進んでいる。これは、米国のGDP成長の中核にAI関連投資がどっしりと組み込まれ、米国経済の成長は現実的にテクノロジー企業に支えられているためだ。米国景気が減速し不況に陥らない限り、テクノロジー株式への人気は根強く続いていくと考えられる。


