各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、常陽銀行のデータをもとに解説。
常陽銀行の投信売れ筋ランキング(販売件数)の2025年7月のトップは前月と同じ「日経225ノーロードオープン」だった。第2位には前月は第6位だった「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」がジャンプアップした。前月第2位だった「のむラップ・ファンド(普通型)」は第4位に下がり、第3位だった「インデックスファンドNASDAQ100(アメリカ株式)」は第3位をキープした。また、トップ10圏外から第9位に「日経平均高利回り株ファンド」、第10位に「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」がランクインした。前月第5位だった「グローバル・ロボティクス株式ファンド(年2回決算型)」と第10位だった「Oneピュア・インド株式ファンド」がトップ10から落ちた。
「ゴールド」の人気はどこまで?
常陽銀行の売れ筋で9月に第2位に上がってきた「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」は、4月時点ではトップ10にランキングされない存在だった。そもそも投資信託(投信)は、株式と債券を伝統的な資産として位置づけ、株式の配当や債券の利子など「インカムゲイン」とそれぞれの価格変動収益「キャピタルゲイン」の2つを収益源にしてきた。ゴールドなどのコモディティは、比較的新しい投資資産で「オルタナティブ(代替資産)」に位置付けられる。株式や債券などの伝統的な資産とは異なる値動きをするところに価値があるとされる。また、株式や債券と違って「インカムゲイン」を生まないという性格もある。このため、多くの投資家が運用資産のごく一部のみを投資しているような資産になっている。
ところが、2025年の金価格の急上昇によって注目度が急速に高まり、ゴールドへ投資するファンドが多くの金融機関で売れ筋ランキングの上位にランクされるようになった。常陽銀行においても、2025年4月時点ではトップ10圏外だった「ピクテ・ゴールド」が、5月に第7位にランクインすると、6月から8月までは5位~6位にランクされ、9月には第2位にまでランクを上げた。この人気の背景には株式に投資するファンドなどを大きく引き離す運用成績がある。
たとえば、2023年12月末を10000として2024年1月以降の基準価額を調べると、2025年10月20日までに「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」は21236と2.12倍(112%上昇)、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)」でも18196と約82%の上昇になっている。これは、国内株インデックスファンドの代表格である「日経225ノーロードオープン」の15012(約50%上昇)、米国株インデックスの中で「S&P500」を上回るパフォーマンスが出やすい「インデックスファンドNASDAQ100(アメリカ株式)」の15660(約57%上昇)よりもはるかに高い運用成績になっている。
特に8月末から10月20日にかけての上昇率が大きく、この2カ月足らずの間に「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」は約26%、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)」は23%の上昇になった。同期間に「日経225ノーロードオープン」は約16%上昇して市場の注目を集めたが、ゴールドの上昇率にはかなわなかった。


