• 要旨

  • o高市自民党総裁は公約の一丁目一番地を「大胆な「危機管理投資」と「成長投資」で、暮らしの安全・安心の確保と「強い経済」を実現」としている。そして高市氏は、自公政権が衆参両院で過半数割れしていることもあり、今回の総裁選に向けた公約の中でも、野党と連携の下で政策修正の可能性も示唆している。

  • o高市氏が描く経済政策は基本的にイシバノミクスから一線を画し、野党の政策も取り入れて、これまでの緊縮財政の度合いを緩めるということになろう。高市氏の経済政策運営のカギを握るのは、名目経済成長率が長期金利を上回る局面では財政規律よりも経済成長を優先し、いかに大胆な投資が実現できるか。

    o少なくとも総裁選の公約通りに政策が進めば、日本経済における最大の課題である供給力の強化が進展することになろう。そうした意味では、高市氏の経済政策も初期段階では、いかに国民の暮らしと安全・安心を確保すべく、25年度補正予算に政策を総動員し、雇用と所得を増やし、消費マインドを改善し、税収が自然増に向かう「強い経済」を実現できるかにかかってこよう。

    o賃上げと経済活性化を伴う良いインフレを定着させるために、最も手っ取り早い取り組みとしては、労働時間のマイナス寄与を縮小させるべく、行き過ぎた労働時間規制の緩和が効果的。その点、高市氏が掲げる心身の健康維持と従業者の選択を前提とした労働時間規制の緩和は効果が期待できる。

    o高市氏が掲げる産業界のニーズを踏まえて活躍する人材、未来成長分野に挑戦する人材を育成すべく、大学改革、高専や専門高校の職業教育充実等の進捗に加え、交易条件のマイナス寄与を縮小させるには、高市氏が掲げる原発も含めた電力供給力向上などに向けた取り組みも重要。

    o中途採用を積極的にした企業や転職者に対するインセンティブを施すなどにより労働市場の流動性を高めて、結果的に賃金上昇に結び付きやすくなる政策にも期待したい。官民ともより広く、都合のいい時間に働ける正社員の枠を増やす政策も必要。

    oバブル崩壊後の政府の経済政策の失敗によって歪められてしまった価値観を、政策総動員により様々な側面から解凍していくことができれば、日本の実質賃金が安定的にプラスで推移することで消費マインドが改善し、税収が自然増に向かう「強い経済」を実現するチャンスは大いにあると期待したい。