最近、新たに確定拠出年金制度を導入する企業において「選択制確定拠出年金(選択制DC)」が注目されています。「選択制DC」にはメリットがある一方でデメリットもありますので、今回はその「選択制DC」について分かりやすく解説したいと思います。
選択制DCの仕組み
最近の報道によると、選択制DCは「給与減額型選択制企業年金」とも呼ばれ、新規の企業年金導入の8割程度が選択制DCという運営管理機関があると報じられています。選択制DCの「選択制」というのは、「給与減額型」とも言われるように、従業員が「給与」として受け取るかわりに「DCの掛金」を「選択」した場合、給料がその分減額されるというものです。このように聞くと、給料が減らされるのであればDCを選択しない方が良いのではという声も聞かれそうですが、「選択制DC」にはメリットもあります。
そのメリットの話をする前に、社会保険について簡単にお話させて頂きます。
社会保険制度には、「国民年金」や「厚生年金」といった公的年金、「確定給付年金」や「確定拠出年金」といった私的年金、「健康保険」、「介護保険」などがあり、その他に労災保険や雇用保険といった労働保険も含まれます。今回説明する「選択制DC」というのは「企業型確定拠出年金(企業型DC)」に分類され、会社員が対象となります。
70歳未満の会社員については、健康保険と厚生年金に加入して、給料に応じた保険料が毎月天引きされますが、その額は健康保険であれば約10%、厚生年金であれば18.3%を事業主と会社員が折半して負担しています。
では、この率は何に対する率かというと、毎年4~6月の給与を基準に「報酬月額」が決定され、それに基づいて下表のテーブルによって「標準報酬月額」が決定され、それに対する率となります。
この表の見方としては、健康保険については、報酬月額が6.3万円未満の人は標準報酬月額が5.8万円で決定され、報酬月額が135.5万円以上の人は標準報酬月額が139万円で決定されるということです。同様に厚生年金については、報酬月額が9.3万円未満の人は標準報酬月額が8.8万円で決定され、報酬月額が63.5万円以上の人は標準報酬月額が65万円で決定されます。
そして、この標準報酬月額に健康保険であれば約10%の半分である約5%、厚生年金であれば18.3%の半分である9.15%を掛けて、毎月の保険料が決定されるというわけです。
なお、2003年4月からは総報酬制が導入され、賞与(標準賞与額)からも同じ率の保険料が控除されることになっています。健康保険料は賞与額が年度合計で573万円、厚生年金は1カ月当たり150万円を上限に保険料を払うことになっています。
【標準報酬月額表】
※報酬月額は「以上~未満」
※厚生年金の標準報酬月額の上限は、68万円(2027年9月~)、71万円(2028年9月~)、75万円(2029年9月~)と段階的に引き上げられる予定。

