新製品を三菱商事と共同販売、露光に代わる技術で半導体市場を開拓

ノリタケの強みも探っていきましょう。食器事業は苦戦していますが、素材ビジネスは比較的順調です。

ノリタケの最大の収益源はセラミック・マテリアル事業です。連結営業利益は直近2期で100億円を超えていますが、その多くをセラミック・マテリアル事業が占めています。主力製品の1つが電子ペーストで、積層セラミックコンデンサの材料に用いられます。積層セラミックコンデンサは経済産業省の「半導体・デジタル産業戦略」において重要品に指定されており、今後も堅調な需要が期待されます。

ノリタケのセグメント営業利益(2016年3月期~2025年3月期)
 
出所:ノリタケ 決算短信より著者作成
 

セラミック・マテリアル事業は新商品も注目です。ノリタケは25年9月、半導体デバイスの製造に用いる銅ペーストを販売すると発表しました。回路形成で一般的なフォトリソグラフィ(露光による転写)と異なり、印刷方式による製造に貢献することが期待されています。

フォトリソグラフィでは基盤全体に銅膜を形成し、不要な箇所を除去することで回路を形成します。このプロセスでは転写や除去用の薬剤を使用するほか、除去した銅膜および薬剤の廃棄が課題です。一方、印刷方式なら必要な箇所にのみ配線できるため、薬剤を使う必要がなく、さらに材料の使用量や廃棄を抑えられる利点があり、実用化に向け研究が進められてきました。

銅ペースト印刷方式の課題は銅粒子でした。従来は配線時に高温の加熱が必要で、基盤を劣化させる懸念がありました。しかし、北海道大学が比較的低い温度で焼結できる銅粒子を開発。ノリタケが量産技術で製造量を拡大させ、製品化に成功しました。

銅ペーストは、回路形成のほか、半導体チップの接合材としての使用も想定します。販売は三菱商事グループと共同で行い、新しく顧客を開拓する計画です。

ノリタケは25年に入り、新しい技術や製品の開発が相次いでいます。1月にリン非含有の新ガラス材の試作に成功したほか、5月に高効率の放熱基板を、6月にはパワー半導体用の銀ペーストを開発しました。

さらに、8月には窒化ガリウム半導体ウェハー向けの研磨パッドを開発します。窒化ガリウムは、シリコンに代わる次世代の半導体材料としてロームやルネサスエレクトロニクスといったパワー半導体大手が注力しています。これら新技術が市場に受け入れられれば、さらなる業績の拡大が期待されます。