かつての「1兆円ファンド」は今

「1兆円ファンド」は文字通り、純資産総額が1兆円を超えた投資信託のことを指します。日本で初めて達成した投資信託は、2000年2月に設定された「ノムラ日本株戦略ファンド」でした。記憶をたどると、確か9800億円前後の資金を集めて運用をスタートさせ、同年5月に1兆1670億円まで純資産総額を増やしたことから、「1兆円ファンド」と言われるようになりました。

しかし、設定された時期がITバブルのピークでした。そのうえ、日本の株式市場はそこから10年以上にわたって低迷を続けました。リーマンショックや東日本大震災による株価急落もありました。

「投資信託は長期保有だからタイミングは関係ない」という意見もありますが、同ファンドの場合、運用開始のタイミングが最悪でした。しかも、設定時からわずか1カ月程度で、ポートフォリオはフルインベストメントになりました。

つまり、ポートフォリオに組み入れられた株式の大半は、ITバブルの高値で買ったことになります。

ちなみに2000年2月末の日経平均株価は1万9959円でしたが、2003年4月には7603円まで下落。そこから2007年2月には1万8300円まで戻したものの、2008年10月にはリーマンショックの影響で、6994円まで下落しました。

これだけ株価が下落すれば、同ファンドの運用成績も推して知るべしです。基準価額は長期間、下落し続け、その間に解約も増え、その純資産総額は2025年2月時点で557億円程度まで目減りしました。結果、ファンド併合によって他の日本株アクティブファンドのマザーファンドと共有化され、同ファンドはその名称も「野村国内株式アクティブオープン」に変更され、現在に至ります。

その後、1兆円を大きく超えたファンドといえば、三菱UFJアセットマネジメントが設定・運用している「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」で、その純資産総額は、2008年7月に5兆7000億円を超えました。なお、同ファンドの運用会社は当時、国際投信投資顧問でしたが、合併により、現在は三菱UFJアセットマネジメントが運用しています。

しかし、「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」は、世界的な低金利による運用環境の悪化や、タコ足分配の問題がクローズアップされ、徐々に解約が増えていきました。10月時点の純資産総額は2500億円程度です。