• 要旨

  • 税収の上振れが続いている。背景には、少なくとも近年の税収弾性値が政策当局の想定よりも高いことがある。この背景としては、物価や株価が上昇していることや、所得税が累進課税になっていることに加え、繰越欠損金や欠損法人割合の変化等が指摘できる。

    実際、デフレに突入して欠損法人割合の水準が高まった98年度以降の平均的な税収弾性値を計算すると約2.13となる。仮に25年度の名目成長率が政府の見通し通りとなり、税収弾性値を98年度以降の平均となる2.13程度になるとすれば、今年度の税収は約80.5兆円となる。8月に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」における税収見通しと比較すれば、25年度の見通し77.8兆円を+2.7兆円程度上回ることになる。

    ストック面からみても、25年度末の一般政府債務残高/GDP比はコロナ前を下回る水準まで戻っており、純債務/GDP比に至っては、実に米国を下回る水準まで下がっている。そもそも財政の健全性を判断する国際標準的な指標は政府債務残高/GDP比であり、あくまで日本の財政目標となっているプライマリーバランスは、デフレで名目成長率が国債利回りを上回りにくい状況でも政府債務残高/GDP比を上げないための目標。

    政府債務残高/GDP比の低下要因を分解をすると、2024年度の低下幅(▲14.3%ポイント)のうち、経済成長率とインフレ率要因の押し下げ幅が財政収支要因のそれを大きく上回っており、低下幅の5割以上がインフレ率要因であることがわかる。足元では日本でもインフレが定着しつつあり、財政の持続可能性にもその分余裕が出てきている。

    今後の青写真としては、景気回復局面ではインフレに伴う財政改善分の一部を適切に活用しながら政府債務残高/GDPの低下を維持した財政運営がベストだろう。効果的と考えられるのは支出の伴う減税である。食料・エネルギーに関する恒久減税措置に加え、トランプ減税のように国内設備投資に対する即時償却減税や残業・転職を促すような減税措置を行えば、資本や労働投入量、労働生産性が高まる可能性があり、潜在成長率の引き上げにも効果的と考えられる。