ビットコインで1兆円クラブ入りした「メタプラネット」
「まさか、こんな使い方があるとは」と思った企業経営者もいたのではないでしょうか。
メタプラネット(3350)という、東証スタンダード市場に株式を上場している企業があります。もともとはダイキサウンド株式会社として1999年に設立され、当時はCDなどの企画・制作・販売を行っていました。
2004年に店頭市場に株式を登録した後、2011年から持株会社制に移行して、社名をフォンツ・ホールディングスに変更しました。そこに東南アジアでホテルや飲食事業を展開しているレッド・プラネット・ホテルズが資本参加し、2013年からホテル事業に参入。2014年には社名をレッド・プラネット・ジャパンに変更しました。
しかし、経営自体はあまりうまく行かず、2016年には飲食事業から撤退し、2017年にはダイキサウンドの株式を全数売却。音楽事業から完全に撤退しました。
2022年9月には、EVO FUND LLCがレッド・プラネット・ジャパン株式の過半を取得し、子会社としてメタプラネット株式会社を設立した後、2023年には社名をレッド・プラネット・ジャパンから株式会社メタプラネットへと変更し、今に至ります。
その株価は、2024年4月8日まで20円前後で推移していました。完全に「倒産株価」です。それが動き始めたのは翌日9日からのこと。いきなり高値で41円をつけました。そして同年5月半ばあたりから動意づき、同年7月に300円をつけた後、調整してしばらく横ばいが続き、同年11月あたりから明確な上昇トレンドを描くようになりました。
急騰したのが2025年5月半ば過ぎからです。2025年2月13日につけた721円の高値を抜いてから急騰し、6月16日には、1895円の高値をつけ、同社の時価総額は1兆1384億円になり、いわゆる「1兆円クラブ」の仲間入りということで、株式市場の話題をさらいました。
ちなみに、8月28日時点で時価総額1兆円前後の企業には何があるのかというと、TOPPAN(1兆1151億円)、ヤマハ発動機(1兆1133億円)、トレンドマイクロ(1兆1059億円)、阪急阪神ホールディングス(1兆1043億円)、大東建託(1兆933億円)、ミネベアミツミ(1兆909億円)、島津製作所(1兆856億円)、三和ホールディングス(1兆775億円)、住友林業(1兆595億円)、日本特殊陶業(1兆560億円)といった具合で、いずれも実業で企業価値を高めている企業ばかり並びます。
こうした錚々たる企業の時価総額を一気に追い抜いたメタプラネットは、レッド・プラネット・ホテルズの資本参加により、2013年からホテル事業を展開し、一時は札幌、東京(浅草と五反田)、名古屋、那覇などに展開しましたが、新型コロナウイルスのパンデミックでホテル事業が立ち行かなくなり、現在も運営されているのは、東京五反田にある「ホテルロイヤルオーク五反田」のみです。当然、業績も厳しく、パンデミック前の2018年12月期売上高は17億3600万円で、3億1800万円の経常赤字、2019年12月期売上高が25億900万円で、3億1300万円の経常赤字でした。
そして、パンデミックによりホテル事業は壊滅状態に陥り、業績と株価は急降下となりました。そのなかで米系ファンドであるEVO FUND LLCが主要株主となり、2024年4月にビットコインを保有資産の中核に据えることを発表しました。