エネルギー市況と廃炉費用が業績を左右 今期4~6月は過去最大の赤字

業績も一進一退です。電力会社として設備の償却費や修繕費などが経常的に生じるほか、エネルギー市況が利益を左右します。東京電力ホールディングスは、これに賠償費や廃炉に向けた費用など、固有のコストが利益を圧迫する構図です。

特に東京電力ホールディングスは事故以来、原子力による発電がありません。電源は火力が中心で、エネルギー市況のリスクを比較的大きく受けます。23年3月期は、燃料費の高騰を主因に赤字に転落しました。翌24年3月期は燃料調整費(※)の期ずれから大幅な増益でしたが、翌25年3月期は燃料調整費が減少に転じ、経常利益は前期比40.2%減となっています。

※燃料調整費…燃料費の上昇を電気料金に反映する仕組み。反映には3~5カ月の遅れ(期ずれ)があるため、市況の上昇時は調整が追い付かず収益が悪化しやすい一方、下落時は電気料金に先行して費用が減少するため収益が改善しやすい。

東京電力ホールディングスの業績(2016年3月期~2025年3月期)を表した図表
 
出所:東京電力ホールディングス 決算短信より著者作成
 

続いて業績の見通しです。東京電力ホールディングスは、今期(26年3月期)の業績の予想を開示していません。柏崎刈羽原発の再稼働が見通せないことから、業績の予想が立たないとしています。

もっとも、同業の動向から見通しは厳しいことがうかがえます。東京電力ホールディングス以外の旧・一般電気事業者9社を集計したところ、今期の業績予想の平均は売上高が前期比6.2%減、経常利益が同26.2%減です。販売電力量および燃料調整費の減少を見込むことが多く、東京電力ホールディングスにおいても売り上げは伸び悩むと考えられます。

なお、今期の第1四半期の決算はすでに公表されています。前年同四半期比で、売上高は4.5%減、経常利益は0.9%減です。販売電力量の減少から減収となった一方、燃料調整費の好転により経常利益は横ばいとなりました。

ただし、新たに燃料デブリ取り出しに関する復旧費用9030億円を特別損失に計上したことから、最終損益は8576億円の赤字です。これは、第1四半期としては過去最大の損失とみられています。