電力首位、「エナジーパートナー」が柱 財務は最悪期を脱する

まずは企業の概要を解説します。

東京電力ホールディングスは主に首都圏を管轄する電力会社です。戦後に設立された電力会社の1社で、売り上げは首位級です。グループには持分法の適用会社として関電工や東京エネシス、また中部電力と共同で設立したエネルギー会社JERA(ジェラ)などを持ちます。

【主な電力会社の売り上げ(25年3月期)】

主な電力会社の売り上げ(25年3月期)を表した図表
 
出所:各社の決算短信
 

15年には持株会社制およびカンパニー制へ移行しました。16年に商号を東京電力から東京電力ホールディングスへ変更し、各事業はカンパニー子会社へ承継します。燃料・火力発電は「フュエル&パワー」が、送配電は「パワーグリッド」が、小売りは「エナジーパートナー」が引き継ぎました。この3社に、19年に設立し再生可能エネルギー事業を承継した「リニューアブルパワー」を加えた4社がグループの基幹会社です。

主力はエナジーパートナーで、売り上げおよび利益の大部分を担います。なお、「ホールディングス」には各カンパニーを統括する役割のほか、原子力部門を含みます。

【セグメント情報(25年3月期)】

東京電力ホールディングスのセグメント情報(25年3月期)を表した図表
 
出所:東京電力ホールディングス 決算短信
 

東京電力ホールディングスは、東日本大震災に伴う事故で事業環境が一変しました。13年3月期までの3年で計2兆7000億円を超える最終損失を計上し、11年3月期には決算書に「継続企業の前提に関する注記」(※)が記載されるに至ります(13年3月期に解消)。自己資本比率は、12年3月期に5.1%まで悪化(10年3月期は同18.7%)しました。

※継続企業の前提に関する注記…会社が将来にわたって事業を継続する前提(ゴーイング・コンサーン)に不確実性が認められるとして財務諸表に記載される注記

機構(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)の支援もあり、最悪期は脱しています。25年3月期で自己資本比率は25.1%まで改善、震災後に15.7倍まで悪化したDEレシオ(負債資本倍率)も、高水準とはいえ1.7倍にまで低下しました。支援の経緯から、機構は議決権の過半を単独で所有する筆頭株主となっています。

もっとも、財務は依然として苦しい状況です。特に資金繰りは厳しく、フリーキャッシュフローは7年連続でマイナスです。設備投資や廃炉などの支出が重く、資金は負債でまかなう状態にあり、有利子負債は22年3月期から増加に転じています。

東京電力ホールディングスの有利子負債とキャッシュフロー(2016年3月期~2025年3月期)を表した図表
 
出所:東京電力ホールディングス ファクトブックより著者作成