AI新興企業オルツが上場廃止に

東京証券取引所グロース市場に上場していた株式会社オルツが、24億円の負債を抱えて破綻しました。7月30日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、同日受理されています。

これを受け、東京証券取引所は同社株式を、8月31日付で上場廃止にすることを決定。整理銘柄に指定しました。

同社が東京証券取引所グロース市場に株式を上場したのが、2024年10月のことですから、何と1年にも満たないわずか9カ月間で、株式市場から退場させられたことになります。

株価ですが、8月6日の終値が19円です。同社の上場初値は570円で、2024年10月16日に765円まで上昇した後、486円まで調整。同年末の12月2日には823円まで値上がりしましたが、これが株価のピークで、その後は上昇、下落を繰り返しながら、下げトレンドが続き、2025年4月25日に売上高過大計上の可能性を公表しました。この一件で株価が急落し、発表当日終値である417円に対し、5月1日は一時105円まで売り込まれました。

昨年12月には823円の高値をつけていますから、ここで買っている投資家もいます。もし1000株を買ったとすると、手数料など考慮しない投資金額は82万3000円。それが19円まで下落していますから、今、売却したところで1万9000円にしかなりません。実に43分の1にまで株価は下落したことになります。

さて、このような状況に対して、投資家はどう対処すれば良いのでしょうか。

実際、オルツ株は機関投資家もかなり保有していた模様です。大量保有報告書によると、りそなアセットマネジメントは2024年12月末までにオルツの発行済株式の5.73%を取得し、さらに2025年1月末には6.97%まで買い進めていましたが、2025年5月、りそなアセットマネジメントが関東財務局に提出した変更報告書によると、同月時点でオルツ株を全額売却したと報道されています。

ひとまず、オルツ株は8月31日の上場廃止までは、整理銘柄として売買できます。同じ上場廃止でも、MBOなど経営戦略の一環として上場廃止にする場合は、自分が投資した時の株価と、買い取ってもらえる株価の水準にもよりますが、利益が得られる可能性はあります。

しかしオルツのように、経営破綻による上場廃止の場合だと、株価が戻らないまま上場廃止になるのが普通です。過去の例を挙げると、破産手続きによって2022年8月23日に上場廃止となったテラは、整理銘柄に指定された2022年8月5日の終値が96円で、それから3営業日後の8月9日には、13円まで値下がりしました。実に86.5%もの下落です。そして、最終売買日2022年8月22日の終値は2円でした。

こうした事例を見ると、たとえオルツの株価が19円だったとしても、売れる時に売っておいた方が良い、ということになります。

おそらくこれからオルツ株は、さまざまな思惑のなかで、いわゆる「1カイ2ヤリ」のスキャルピングトレードが行われるでしょう。たとえば18円で10万株を買い、19円で10万株を売るといったマネーゲームが繰り広げられますが、これはよほど短期売買の腕に自信のある投資家以外は近づかないのが無難です。