返済額「月3万円増加」、対応策は“がらり”と変化
調査では月の返済額が3万円増加した場合の対応策についても聞いている。3万円になると回答結果は大きく変わる。「返済目処や資金余力があるので返済継続」と回答した人は24.6%にまで減少。1万円増加のケースと比較すると、38.3ポイントもの差がある結果となった。
代わりに「全額完済」「一部繰上返済」が合計21.7%と同11.8ポイントも増加。早めに完済あるいは返済額を増やして残額を減らしておこうと考える人が増えるようだ。また「借換え」も20.0%と同13.9ポイントも増加しており、ローンの契約内容を見直すという人も増える傾向にありそうだ。
注目すべきは「見当がつかない、わからない」と回答した人が31.0%と、約3人に1人に増えていることだ。月々の返済額が3万円増加するというシナリオは一定数の利用者にとって対応が難しいと思われているとも解釈できる。
返済額「月5万円増」は未知の世界? とはいえ想定を
さらに月々の返済額が5万円増加した場合、「返済目処や資金余力があるので返済継続」と回答した人はわずか10.8%にまで落ち込む。月3万円増加の場合と比較すると、「全額完済」「一部繰上返済」「借換え」といった対策を講じると回答した人が42.0%となり、「見当がつかない、わからない」と回答した人は44.0%と、回答傾向が二分されている。
月々の返済額が5万円増加するというシナリオは多くの住宅ローン利用者にとって対応が分かれる状況となりそうなことが示された。
調査結果から、住宅ローン利用者の多くは月々1万円程度の返済額増加であれば現状の家計でも対応できると考えているが、3万円以上の増加になると具体的な代替策が必要になると認識していることが分かる。
また、返済の増加額が増すにつれ「見当がつかない、わからない」と回答した人が増えていくことは、金利上昇リスクへの対策が十分に浸透していない可能性を示唆している。特に月5万円の返済増となると、44.0%の人が対応策を持っておらず、将来的な家計破綻のリスクにつながりかねない。
金利上昇リスクへの備えとして考えたいこと
住宅ローンの金利上昇リスクに備えるためには、以下のような対策を事前に検討しておくことが重要だ。
1.返済シミュレーションの実施…金利が上昇した場合の返済額をあらかじめシミュレーションし、家計に与える影響を把握しておく。
2.資金的な余裕を持った計画…毎月の返済額に一定の余裕を持たせ、金利上昇に対応できる家計設計を心掛ける。
3.繰上返済の計画…余裕資金ができた場合には積極的に繰上返済を行い、総返済額と返済期間を減らす。
4.借換えの検討…金利動向を注視し、より有利な条件での借換えのタイミングを図る。
住宅ローンは数十年にわたる長期の借入であり、その間に金利環境が変化する可能性は十分にある。将来の金利上昇に備え、返済額が増加した場合の対応策をあらかじめ検討しておくことが安定した住宅ローン返済を続けるための鍵となるだろう。
調査概要 調査名:「住宅ローン利用者の実態調査 【住宅ローン利用者調査(2025年4月調査)】」 調査主体:住宅金融支援機構 公表日:2025年6月27日 調査期間:2025年4月30日~5月12日 調査対象:2024年10月~2025年3月までに個人向け住宅ローン※の借り入れをした1397人(全国20歳以上~70歳未満、学生・無職除く) ※借換、リフォームローン、土地のみローン、投資用ローン除く)