各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、大和証券のデータ(週次)をもとに解説。
大和証券の投信売れ筋ランキングの2025年10月最終週のトップは、前月に続いて「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」だった。第2位には前月第3位だった「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」が上がり、第3位には前月第8位から「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(為替ヘッジなし)」がジャンプアップした。前月第2位だった「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)」は第4位に後退した。また、前月は第10位だった「ストック インデックス ファンド225」が第9位に上がり、トップ10圏外から「ダイワ金融新時代ファンド」が第10位にランクインするなど国内株ファンドの人気も復調してきている。
積極的なリスクを取った売れ筋上位
大和証券の売れ筋(ダイワのオンライントレード買付金額(総合)ランキング)に「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」が最初にランクインしたのは、2025年3月で、第6位だった。その後、第7位、第7位、第4位、第3位、第2位となり、9月からはトップに立っている。この間、同ファンドの基準価額は上昇を続けており、9月までに購入した投資家は全てプラスの収益を確保できていた。ところが、10月は基準価額が10月21日に一旦ピークをつけて下落する動きになった。10月29日の安値まで下落率が7.3%を超えたため、価格が跳ね上がった10月8日以降に購入した投資家の多くは10月末時点では含み損になってしまった。この影響が11月以降にどのように出てくるのか注目される。
純金(ゴールド)価格の上昇は近年の顕著なことであり、多くの販売会社の売れ筋ランキングに「ピクテ・ゴールド」や「三菱UFJ純金ファンド」がランクインしている状況になっているが、それがトップに立ち、そのまま連続してトップを占めているのは珍しい。もとより大和証券の売れ筋ランキングは、インデックスファンドやバランス型のような市場平均並み、または安定的な運用成果を求めるファンドより、株式のアクティブファンドを軸として積極的にリスクを取るファンドが上位にランクされるという傾向が見て取れる。その時々において、パフォーマンスが優れたファンドを目ざとく見つけ出し、ランキングに加える動きも速い。今回「ピクテ・ゴールド」を3月の段階から高く評価して積極的に支持してきたのも、その目利き力が発揮された結果ともいえる。
現在のトップ10ランキングには、「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Bコース(為替ヘッジなし)」、「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(1年決算型)」、「netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」など、現在の投資信託市場で全国的な人気を集める株式アクティブファンドがそろっている。しかも、収益を再投資するタイプのコースばかりで、他の販売会社で人気の高い「毎月決算型」はラインアップに入っていない。その点では、中長期的にインデックスを上回る高いリターンをめざすという意図が強く表れているラインアップといえる。
一方、米国「S&P500」や全世界株式「MSCI-ACWI」などに連動するインデックスファンドは売れ筋ランキングに入っていない。今回「ストック インデックス ファンド225」がランクインしたものの、下位にとどまっている。
株式インデックスファンドは、2025年4月の急落があったように、景気の先行き不透明感が強まった場合や地政学的リスクが高まった局面などで不安心理が強まると急落することがある。2024年1月以来2年足らずの間にも2024年7月と2025年4月の2回の急落場面を経験した。そのような市場の急変時に、インデックスファンドは市場の不安心理のままに上下動を余儀なくされるが、アクティブファンドは、その時々の相場観によってピンチをチャンスに変える立ち回りも可能だ(もちろん、市場を読み間違えてかえってパフォーマンスを悪化させることもある)。
アクティブファンドが上位に並ぶ売れ筋は、株価が高値圏にあって市場の不透明要因が重なっている現状の難しさを表しているのかもしれない。


