60歳以降のお金と老後の備え

経済面では、「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」または「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」と回答した人は7割弱となっている。

老後生活においては、公的年金制度と併せて民間保険(生命保険、医療保険等)や個人年金、企業年金も重要な役割を担っている。老後の備えについては、民間保険や私的年金等の加入状況についても質問をしているが、いずれにも加入していない人の割合は前回調査時(2019年)の36.2%から大きく低下し、17.2%となっている。加入していない人が2割弱にとどまる現状からは、収入面や健康面等、高齢期のリスクに応じた備えが全体的に進んでいることがうかがえる。

一方で、認知機能の低下等に伴う財産管理の備えについては、「必要」と回答した割合が7.8%、すなわち1割以下と低い水準にあることは注目すべき点だろう。性別、年代、家族形態にかかわらず全体的に低いため、認知機能の低下は誰にでも起こり得ることを考えると対応策を視野に入れておきたい。

調査結果を参考に、充実した老後生活を送るためにできそうなことを考えてみよう。

働いて安定収入を得る…「ゆるく・細く・長く」、自分のペースに合わせて働けるうちは働くという選択肢を視野に入れるとよいかもしれない。

若いうちから資産形成に励む…老後の経済的安定のために現役世代から計画的な資産形成に着手したい。そのためにはNISA(小規模投資非課税制度)、iDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)などの制度の活用も有効だ。

 ・できるうちから終活にも着手する…終活の必要性を感じつつも準備していない層が約3割いる。寿命は誰にも分からないので、早い準備に越したことはない。人生を振り返りながら進めることで、今を生きる上での気づきがあるはずだ。

認知機能の低下に備える…認知機能の低下は誰にでも可能性がある。特にお金に関して口座管理等の備えが最優先となる。必要に応じて家族などとも話し合う機会を持ちたい。 

人生の集大成を迎える老後生活を送るにあたり、仕事、お金、健康、終活といった様々な備えについてあらためて考えてみることはきっと役に立つだろう。今を大切に生き、自分らしい老後を過ごすためにできることがきっとあるはずだ。

調査概要 白書名:令和7年版高齢社会白書 調査主体:内閣府 公表日:2025年6月10日