収入不足への対応策の違い「75歳」を境に変わる

年代別に見ると興味深い傾向が浮かび上がる。

収入不足への対応(性・年代別)を表した図表
 
出所:内閣府「令和7年版 高齢社会白書」
 

「自分が仕事をして収入を得る」との回答は、年齢が若いほど高くなる傾向が顕著だ。60〜64歳では男性の63.0%、女性の52.2%がこの選択肢を選んでいる。対して75~79歳では男性24.6%、女性9.7%と大きく下がる。

もちろん体力や健康状態も影響するだろうが、世代による就労意識の違いや、就労可能な環境の有無も関係していると考えられそうだ。60代前半は定年退職後も再雇用や新たな職場での就労など、急速に進む少子高齢化も相まって働く選択肢が多い年代であることが反映されているとみられる。

調査結果を詳しく見ると、75歳前後で収入不足への対応策が大きく変化することが分かる。75歳未満では「自分が仕事をして収入を得る」という積極的な対応が比較的目立つのに対し、75歳以上になると「貯蓄を取り崩している」といった選択肢の割合が相対的に高くなる。

特に注目すべきは、70歳以降から「特に何もしない」との割合が増加する点だ。高齢になるほど生活スタイルの変更が難しくなることや、収入不足に対する諦めの気持ちが表れているのかもしれない。

今から取り組める対応策は?

調査結果を踏まえると、高齢期の収入不足に対しては年代に応じた対応策を検討することが重要といえそうだ。60代〜70代前半など、健康に支障なく働けるのであれば「自分が仕事をして収入を得る」という選択肢を積極的に考えることが有効だろう。実際に調査でも60代前半の半数近くがこの対応策を挙げている。

一方で、「節約等により支出を減らす」は全年代を通じて過半数超えが目立つなど高い割合を示しており、支出の見直しは年代を問わず考えられる対策といえる。また「資産の運用・売却」も一定の割合を占めていることから、老後資金の運用や不動産などの資産活用も検討の余地があるだろう。

調査からは、老後生活の経済面における課題と対応策について参考になる結果が明らかになっている。これから老後を迎える人にとっても気になる内容といえるだろう。「特に何もしない」という回答をどうとらえるかは考え方次第だが、高齢になるほど増えるという傾向を鑑みると、早いうちからの準備に越したことはないともいえそうだ。

●経済面での不安はないのか。後編「「老後生活の経済不安ランキング」60歳以上2188人が回答した“トップ10”が明らかに」にて詳報する。 

調査概要 白書名:令和7年版高齢社会白書 調査主体:内閣府 公表日:2025年6月10日