中央銀行の需要が金価格を下支え
こうしたさまざまな需要の中でも、注目すべきは中央銀行の需要だ。
下記のグラフは、世界の中央銀行による金の純購入と純売却の推移である(図3)。1970年から2009年までの間は売り越しが見られたが、ソ連が崩壊して冷戦が終了し、経済のグローバル化が進む中で、各国が外貨準備をドルに集中する傾向がみられた。

しかし、2008年の世界金融危機(リーマンショック)をきっかけに中央銀行はドルやユーロへの依存を徐々に減らし、準備通貨を分散させる動きが進む。2010年から15年連続で金の買い越しを続けているのだ。特にウクライナとロシアの紛争以降、ロシアに対するドル資産の凍結など経済的な混乱が生じており、中央銀行の金の購入が大幅に増大した。2022年以降、3年連続で1000トンを超える金が買われている。
「中央銀行の金需要は、10年間の平均ですと約15%ですが、この3年では23%に達しています。金の世界組織であるワールド ゴールド カウンシルの2024年の調査によると、中央銀行の69%が今後の5年以内に金による外貨準備を増やすと答えました。つまり、中央銀行の買いは中長期的に続くと予想されます」(チャン氏)。
こうした安定したニーズがあるため、経済や政治が不安定な状況になっても、金には一定の需要が生まれる。供給量が限られ、需要も大きくは崩れないため、金価格は安定する傾向があるのだ。