金価格の上昇が話題になっている。金の現物価格は、2019年ごろは1トロイオンス1000米ドル台で推移していたが、それ以降金価格が上がり続け、2025年の4月には最高値となる3500米ドル超をつけた。

なぜこれほどまでに金が人気なのか。金のETFの運用会社として知られているステート・ストリートの資産運用部門であるステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(ステート・ストリート)でゴールドストラテジストを務めるアーロン・チャン氏に聞いた。

Aron Chan/ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントにて、日本における機関投資家ビジネス等を、金(ゴールド)とETFプロダクトの専門家としてサポートしている。

金の総量は公式競技用プール約5.6杯分

 「有事の金」とも呼ばれるように、金は価値が比較的安定した資産として知られている。しかし、なぜ金価格は底堅い値動きをするのだろうか。

 そのカギは、需給のバランスにある。

まずは供給についてみてみよう。金は希少性の高い資産で、地上在庫総量が21万6千265トン(2024年末時点)と限られており、地上にある金は公式競技用プール約4.5杯分。埋蔵量は約1.1杯分で、合計しても約5.6杯分となっている(図1)。

 

総量に限りがあるため、毎年の供給量が限定的で安定しているという。長年、金のETFを運用しているステート・ストリートでゴールドストラテジストを務めるチャン氏は、「実際に、過去10年間のデータを見ますと、新たに市場に供給される金の量は総量に対して年平均で約1%となっています。その内訳は、金鉱山からの生産が約75%を占めており、残りはリサイクルによって供給されます」と説明する。このように、供給量が限られている点が金の大きな特徴のひとつだ。

 

多様な金の需要

次に、需要についてみてみよう。金の需要は、景気との連動に特徴があるとチャン氏は話す。「景気に連動しやすい需要としては、宝飾品の需要が49%、電子チップなどの工業品の需要が7%あります(図2)。投資需要は29%あり、景気が悪い時に資産の逃避先として買われるなど、景気や市場と逆の動きをします。そして、景気に左右されにくいのが、残りの15%を占める中央銀行の需要です。中央銀行が金を準備通貨(有事の際の備えとして保有する資産)の一部として保有するため、この需要は経済の状況にあまり影響されないのです」。