よく聞く「オール・カントリーといっても実質米国に投資している」という指摘に対しては…?
ところで、ACWIはその算出方式が「時価総額加重」式であるがゆえに、国別構成が米国に集中している、と指摘されることがある。実際、構成銘柄の上位はアップル、エヌビディア、マイクロソフト、アマゾン、メタというように米国企業で占められ、国別構成比は米国が66.7%、日本が4.7%、英国3.1%、カナダ2.8%、中国2.6%。これをACWIの“弱点”であるかのように指摘する声もある。さらには、そこから「オルカン」と組み合わせるべき、次の一手となる指数、アセットはどのようなものか模索する声も日に日に聞かれるようになった。
「地理的に見れば米国が勝ち組と言えるのかも知れませんが、セクターで見れば、純粋にテクノロジー・通信サービス関連が注目されるなかで、結果的に米国企業がその過半を担っているから、米国の構成比率が高くならざるを得ないという見方もできます。株式の市場を、そういった形で、もう一段掘り下げて、どのような分散投資ができるか考えるのは十分価値のあることだと思います」(寺沢氏)。
例えば、米国に大きく偏っている現在の国別構成比がリスキーであるという判断ならば、日本株や欧州株の構成比率を高めて地域分散を図るという選択肢もあるし、株式以外の資産への分散を図りたいのであれば、債券やコモディティ、不動産にも振り向けるといったアイデアも考えられる。
地域分散という点で、日本株への投資意義について寺沢氏は次のように語っている。
「当然、ACWIの中に日本株も組み入れられていますが、加えて個別の日本株ファンドなどを通じて日本人の資産形成が自国市場でより活発になることは望ましい姿と言えるでしょう。近年、地政学的にも日本市場への注目が高まっていますし、個人を含む多様な市場参加者の資金が流入することで市場機能が向上することに、市場は期待しています」
また資産クラスの分散についても、寺沢氏は多様な選択肢があることを示した。
「MSCIでは、債券や不動産、プライベート・エクイティなど他の資産クラスの市場動向を示すインデックスも日々算出しています。これらに連動するファンドが組成されれば、ACWIをポートフォリオのコアとしながら、サテライト的にリスク源泉や収益機会を拡張することが可能になります。もしリスク許容度が低いのであれば、ACWIと債券インデックスを組み合わせる手もありますし、より分散投資効果を高めたいのであれば、ACWIに不動産やプライベート・エクイティのインデックスを組み合わせるという手もあります」