NISAの制度見直しが行われた2024年1月以降、資産形成の機運はいっそう高まり、その中心にあるのは、オール・カントリー型のインデックスファンドだといえるだろう。
その代表的な存在は、「オルカン」の略称でおなじみの「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」で、純資産総額は1本のファンドで6兆円を超える(2025年6月時点)。
そして同ファンドはじめ、多くのオール・カントリーインデックスファンドが連動目標とするのが、「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(以下、ACWI)」だ。
今回、このインデックスを日々、算出しているMSCIの東京オフィス 日本代表 寺沢亮也氏に昨今のオール・カントリーブームといえる状況をどのように見ているのか、そして、この先インデックス(指数)はどのような可能性を秘めているのか聞いた。

てらさわ・りょうや/J.P.モルガンで債券デリバティブ営業、株式デリバティブの取引・ストラクチャリング部門、国内大手機関投資家を担当する市場営業本部長を担当したのち、2023年にMSCI日本代表として入社し、MSCIの日本ビジネスを統括。
ACWIは1990年に開発されて以来、長い歴史を持つ。全世界株式と言われるように、現時点において先進国23カ国、新興国24カ国の計47カ国の株式が構成銘柄になっており、これだけで全世界の85%の株式市場をカバー。かねて機関投資家運用のベンチマークとして活用されてきたと同時に、ACWIへの連動を目指すETFが多数上場されており、世界中の機関投資家から、広く認知されてきた。
そして昨今、日本の個人の資産形成においても、ACWIやそれに連動するインデックスファンドの認知度が向上した。その背景をどのように見ているのだろうか。
「個人の資産形成に必要なものとして、投資対象の分散、長期・積立投資、価格の透明性が挙げられますが、これらを規制面や技術面で実現できるようになったことに加え、やはり個人が資産運用の必要性をひしひしと実感するようになり、そのなかで国際分散投資や長期・積立投資といった行動様式が市民権を得るようになったことが、大きいと見ています」(寺沢氏)。
NISAの口座数は、成長投資枠、つみたて投資枠を合わせて約2647万口座(2025年3月時点)。NISAは、資産運用立国へ向けての第一歩だが、実現のためには、「分かりやすさ、シンプルさ、商品に対する安心感を成り立たせる必要があります」(寺沢氏)。その点で、特定の国や地域、業種、企業に偏らないACWIは、インデックスとしての理想形のひとつを提示したと言える。