米国イラン核施設への攻撃の余波

ここからは米国によるイランの核関連施設への攻撃を受け、6月22日14時に追加収録した内容に入ります。

出所:内田氏

既に報じられている通り、米軍がイランの核施設3カ所に対して攻撃を行い、「大成功」だったと表明しました。攻撃が体制転換を意図するものではないと伝えられている一方、イランが和平に応じない場合はさらなる攻撃に直面するとも警告しています。まだ、緊張が続きそうです。

ここで改めてドル指数と原油先物相場の動きを振り返っておきます。平時においては両者に関連性はみられませんが、イスラエルとイランが戦闘状態に入り、地政学リスクから原油価格が上昇したタイミングで両者は同じような動きを辿り始めました。即ち、原油価格が上昇するとドル高が進みやすくなるのです(13ページ)。

 

改めて原油相場とドルの関係を整理しておきましょう。原油相場が上昇すると、産油国である米国では輸出の額が増加することによって貿易収支が改善します。これが、ドル高を招くと考えられます。反対に、原油の輸入国である日本やユーロ圏では貿易赤字が拡大します。その結果、通貨安圧力が生じると考えられます。輸入インフレの高進によって、例えば日銀による利上げ観測が台頭する場合、円安に歯止めがかかることもありますが、コストプッシュのインフレに対する利上げを中銀は躊躇しがちです(14ページ)。

出所:内田氏

来週も戦闘の長期化や戦線の拡大、特にホルムズ海峡での緊張の高まりが原油相場の上昇を招く場合、ドル円は直近高値を更新し、しばらく底堅く推移すると考えられます。一方、今回の攻撃を受け、事態が終息(収束)へ向かうとの見方から原油相場が反落する場合、ドル円も一旦145円を割り込み、再び関税交渉睨みの相場へと戻りそうです。ただ、原油の動向をみる限り、前者の可能性が高い情勢です(15ページ)。

出所:内田氏

改めて年初来のドル円をみておきますと、5月下旬、米国際貿易裁判所が関税差し止め判決を下した際、ドル円は146円30銭付近まで上昇しました。ここを抜けるのはほぼ確実と言えます。一方、5月上旬、米中が暫定合意に至ったことが好感された際に記録した148円台後半まで達する大相場になるのかどうか、ここからの原油市況、地政学リスク次第と言え、見通しにくい状況です(16ページ)。

 

最後に、おそらく今後、よく登場するであろう「ホルムズ海峡」を確認しておきましょう。これはペルシャ湾とオマーン湾の間に位置する幅の狭い海域です。イランはこれまでにも封鎖すると脅しをかけてきたことがあるほか、実際に航行妨害や威嚇行為を行ったことがあります。日本の原油輸入の9割以上、世界の貿易量の約3割がここを通過するとされており、仮に封鎖される事態となれば世界経済、日本経済への影響は甚大なものとなります。

出所:内田氏

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