改めてドル指数を見ておきましょう。2021年以降のレンジの上から61.8%押しにあたる水準が98付近です。この攻防の象徴がユーロドル1.15でしたが、今週は先述の通り、原油価格の上昇によって、資源輸出国である米国と純輸入国である日本やユーロ圏で、明暗が分かれ、ドル指数も99まで反発する場面がありました。これがドルの実力かどうか、まだ見極めが難しい状況にありますが、ドル安に歯止めがかかりつつある動きが出始めています(8ページ)。
一方の円について、スイスフラン円を材料に持続的な円高が容易ではない点を考えていきます。今週、スイス国立銀行(スイスの中央銀行)が利下げを行い、政策金利がゼロになりました。日本の政策金利はスイスよりも高い0.5%ですが、そんなスイスフラン円が昨年7月の史上最高値である180円に迫るスイス高円安となっています(9ページ)。スイスフランに限らず、多くのクロス円で円安が進んでいる点をこれまで紹介してきました。結局、ドル安円高が進んできたのも、その多くは円高ではなくドル安と考えられます。このところのスイスフラン円の動きはまさにそれを象徴するものです。
著者情報
内田稔
うちだみのり
高千穂大学 教授/FDAlco 外国為替アナリスト
1993年慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、東京銀行(現、三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2007年より外国為替のリサーチを担当。2011年4月からチーフアナリストとしてハウスビューの策定を統括。J-Money誌(旧ユーロマネー誌日本語版)の東京外国為替市場調査では、2013年より9年連続アナリスト個人ランキング部門第1位。2022年4月より高千穂大学に転じ、国際金融論や専門ゼミを担当。また、株式会社FDAlcoの為替アナリストとして為替市場の調査や分析といった実務を継続する傍らロイターコラム「外国為替フォーラム」、テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、News Picks等でも情報発信中。そのほか公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、証券アナリストジャーナル編集委員会委員も兼任。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会認定アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本金融学会会員、日本ファイナンス学会会員、経済学修士(京都産業大学)
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