2025年5月16日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」(以下、年金制度改正法案)が国会に提出され、6月13日に成立しました。
年金制度改正法案には、公的年金の見直し(被用者保険の適用拡大、在職老齢年金の見直し、遺族年金の見直し、厚生年金保険の標準報酬月額の上限額引き上げ)とともに、私的年金制度の見直しも盛り込まれています。私的年金制度のうち、確定拠出年金(DC)について整理してみましょう。
60歳以降のiDeCo活用の考え方が大きく変化
確定拠出年金(DC)については、個人型DC(愛称iDeCo)の加入可能年齢を70歳まで引き上げることが最も大きい変更点です。これにより、高年齢層については従来の大前提が崩れたともいえます。
iDeCoは「公的年金の上乗せ」であり、加入者は公的年金の被保険者であることが要件です。そのため、現在のiDeCo加入者でいられる期間は最長でも65歳までです。それが今回の改正法案により、公的年金(とiDeCoの老齢給付金)の受給者でなければ、70歳までiDeCo加入者になれることとなりました。
なお、ここで補足ですがiDeCoの「加入者」とは「掛金拠出ができる人」であり、掛金拠出分の税優遇(所得税・住民税)を受けられる人を指します。あわせて拠出した期間は退職所得控除の勤続年数に足し合わせることができます。
「公的年金の上乗せ」枠に替わる要件は下記2点です。
1)iDeCoを活用した老後の資産形成を継続する
2)iDeCoの老齢給付金を受給していない
第五号加入者
現在のiDeCoの加入者は4種類に分かれています。
① 第一号加入者(国民年金の第一号被保険者)
② 第二号加入者(国民年金の第二号被保険者)
③ 第三号加入者(国民年金の第三号被保険者)
④ 第四号加入者(①②の60歳以降65歳までの公的年金の被保険者)
上記①~④にあてはまらない70歳までの方は、改正法案が施行されると「第五号加入者」としてiDeCoを活用できるようになります。施行日は公布の日から3年以内で政令に定める日のため、2028年6月までとなります。つまり1958年5月以降に生まれた方で老齢基礎年金やiDeCoを受給していない方であれば、iDeCoの加入者になれる可能性があるわけです(施行日によっては1957年生まれの方も対象になる可能性も)。
具体的な事例で要件や注意点を考えてみましょう。