甥は既読スルーを続け、実家はゴミ屋敷に

姉は最期の1カ月を病院で過ごしましたが、その間、恒司はほとんど顔を見せなかったようです。それなのに、相変わらず遊び歩いたり、飲み歩いたりしていたらしく、さすがにそれはないだろうと「お別れの時が近づいてきているのだから、顔を見に行ってあげてね」と何度かLINEを送りましたが、既読スルーでした。

万起子が姉に頼まれて手紙や本を取りに実家に立ち寄ったら、リビングにはコンビニ弁当やカップ麺の空き容器が散乱していて、ゴミ屋敷のようだったそうです。万起子は「恒司のことまでやってあげる気はないから」と、見ないふりをして必要な物だけ持ち出してきたと話していました。

結局、恒司が病院に姿を見せたのは、本当に最後の最後、姉が息を引き取る直前でした。入院して1カ月で驚くほどやせ衰え、すっかり面変わりした姉の死に顔を見ても、涙一つこぼすことはありませんでした。しかも、病室にいたのはたったの30分ほど。遺体の搬送や葬儀社への連絡などに追われる万起子を残し、さっさと引き上げてしまったのです。

最近は葬儀場が混んでいて順番待ち状態になっていると聞いていましたが、まさに姉の時もそうで、葬儀は翌週の週末になりました。本来ならその間、姉の遺体は自宅で保管するのでしょうが、自宅はゴミ屋敷状態だし万起子もいったん名古屋に戻る必要があり、葬儀場で預かってもらうことにしたそうです。

結局、喪主も万起子が務めることになりました。

「じゃあね、あとはよろしく」と去っていく息子

葬儀の日こそ恒司は喪服を着て神妙な顔で立っていましたが、お別れに来てくれた親戚や姉の友人らへの対応は全部万起子任せ。久しぶりに会った仲の良かった従兄弟とだけ話をしていました。

当日は初七日の法要も兼ねていて精進落としの席も用意していましたが、参列してくれたのはほとんど高齢者だったこともあり、大半がすぐに席を立ちました。すると、恒司も「じゃあね、あとはよろしく」とかばんを手にしたので、私が「恒司、今日はお母さんとお別れの日なんだから、もうちょっと3人でいてあげようよ」と引き留めようとすると、万起子に「叔母さん、いいから」と制止されました。

そして、2人でたくさん残ってしまった料理に手をつけながら、私は万起子から驚くべき話を聞かされたのでした。

●後編【強すぎる母性は時に狂気? 「財産は全て息子に渡す」末期がんの母親の衝撃的な遺言に、娘が決めた復讐の方法】では、東さんが姪から聞いた、姉と甥の共依存の実態と驚きの遺言内容が明かされます。

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