「金利がある世界」での負債の管理

家計に負債がある場合、資産と負債のバランスを把握することも重要です。日本銀行の政策金利引上げ以降、家計の負債として代表的な住宅ローンの金利も徐々に上昇しており、特に変動金利型ローンの利用者にとっては金利上昇による家計への負担増が懸念されます。「資産を形成する」ことと同じくらい「負債をどう減らしていくか」も、「金利がある世界」においては重要度が増しています。

ミライ研のアンケート調査でも住宅ローン返済中の世帯(1,218世帯)の67.2%が「金利が上昇したら、ローン返済に何らかの変更を検討する」と回答し、手段として「一部繰り上げ返済」が最も多く選ばれました(※)。

一部繰り上げ返済は、手数料無料かつオンラインで手続きできるようになっている金融機関が多いため、比較的手軽に取り組めます。ただし、「返済負担が減少すれば、その分、資産形成できる」ともいかないようです。図表1のように、「繰り上げ返済経験があるものの、将来の生活設計・資金計画の検討はない人(114人)」では、「住宅ローン返済があるものの、資産形成には取り組んでいる」との回答が34.5%にとどまります。将来計画がないと、ローン返済と資産形成の両立は難しい傾向があります。

繰り上げ返済を行う際は、「返済負担がどの程度、減少するかの見通し」だけでなく「家計の余資を返済に使うことの影響」をライフプラン表&キャッシュフロー表に反映させ、計画を再策定することが大切です。

(※)詳細は、ミライレポート『「金利がある世界」はくる?こない?−住宅ローン金利が上昇したとき、あなたならどうする?−』をご覧ください

【図表1】住宅ローン返済と資産形成の両立

(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)
※回答者は、住宅ローン返済中の方
※住宅ローンと資産益性の両立についてお伺いした設問で「この中には一つもない」の回答者は除く

不測の事態への備え

「行動する」のステップでもう1つ考えておきたいのが、”不測の事態”への備えです。例えば、死亡、病気・ケガによって働けなくなる状況などは、ライフプランに織り込みづらいものの、万が一発生すると、その後のライフプランや資産形成の計画に大きな影響を及ぼします。このようなケースに対応するには、保険の活用が一般的です。保険料を支払うことで、不測の事態が生じた際に大きな保障を得るようにしておけば、その後のライフプランなどへの影響を抑えることができます。社会保障や勤務先の各種福利厚生制度における保障内容を確認したうえで、不足分は個人の保険でカバーするのが、望ましいでしょう。

次回は、社会保障のなかでもとりわけ家計にとって影響の大きな「年金」を解説します。

(筆者:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員 矢野 礼菜)

●次回記事【全世代に共通するお金の悩みは「老後資金」…不安の解消の第一歩として知っておきたい公的年金のこと】