ファイナンシャル・ウェルビーイング(Financial Well-being、以下FWB)向上にむけた「①学ぶ」「②把握する」「③相談する」「④行動する」の4つのステップのうち、前回までに「③相談する」まで確認し、「ライフプラン表&キャッシュフロー表」が完成しました。今回は「④行動する」のステップについてです。このステップでは、①ライフプラン表&キャッシュフロー表に基づいた資産形成の実践と、②家計への影響が甚大な“不測の事態”への備えに着目します。
●前回記事:【ライフプラン策定はどう進める? 自分や家族の“より良い状態”を目指すために意識したい観点とは】
資産形成の実践で押さえておきたい「リスク」
資産形成の実践では、ライフプラン表&キャッシュフロー表の策定により、今後の家計における保有資産目標額と、それを準備していく時間軸が明確になりました。次は、「どのような手段・金融商品で準備を進めるか」が検討の要点となります。
家計の資産形成手段は、「貯蓄」と「投資」の2つに大別できます。貯蓄は、自国通貨の預貯金で資産を蓄積していくことです。投資は、貯蓄以外の資産にお金を投じることです。
「投資」というと、デイトレーダーのように一日に何度も株式などを売買するようなイメージが浮かぶかもしれませんが、家計の資産形成手段としての投資では、「長期・分散投資」で積み立てるのが原則です。インフレ基調の経済見通しにおいては、長期・分散投資によって「資産の運用リスク(投資対象のリターンの振れ幅)」をコントロールしつつ、運用成果により家計資産の伸びを支えていくことが、「家計行動の基本」になっていくと考えられます。2024年より制度が拡充された少額投資非課税制度(NISA)の利用者が急拡大していますが、資産形成のための有効な制度としての利用が期待されます。
他方で、家計の保有資産を目標額に着実に近づけるのであれば、「運用リスクはとらず、貯蓄で準備するべきでは」という考え方もあります。その場合、「目標額の未達リスク」に留意する必要があります。
例えば、
1. 家計の保有資産の目標額400万円
2. 準備期間10年間
3. 貯蓄で月3万円ずつ積み立てる
というケースで考えてみます。
10年後の到達金額は、「元本360万円+預貯金の金利(累積額)」ですが、足元の預金金利水準では目標額の400万円には届きそうにありません。運用リスクは取っていないものの目標額には到達できず、結果として本来の目的である「思い描いたライフイベントの実現」が危うくなることになります。「貯蓄するか、投資するか」を検討するうえでは、理解しておきたい「リスク」の1つです。