前回に引き続き、今回も投資信託に関わる「常識」を疑います。

【投資信託選びの常識③】
ターゲットイヤー・ファンドは万人向き?

投資信託の“専門家”が語るもう一つの投資信託選びの「常識」が、「ターゲットイヤー・ファンドは万人向き」との認識でしょう。

多数の加入者が初めて投資を行うことが想定される確定拠出年金では、多くのプランでターゲットイヤー・ファンドが採用され、その「万人向け」の商品性から、指定運用方法(デフォルト・ファンド)にも選定されています。掛金の配分指定(運用指図)がなされない場合に、加入者自身が選択したものとして、自動的に購入される運用商品として位置付けられているわけです。確定拠出年金の先進国である米国でもターゲットイヤー・ファンンドはデフォルト・ファンドとして利用され、残高を大きく伸ばしています。

この「常識」は正しいと考えても良いでしょうか? ターゲットイヤー・ファンドは本当に万人向きなのでしょうか?

まずはターゲットイヤー・ファンドとはどんな投資信託なのか確認します。

 

ターゲットイヤー・ファンドの狙いは?

ターゲットイヤー・ファンドとは、バランス型ファンドの一種です。株式や債券などに分散投資を行ない、年代やライフサイクルに合わせて運用会社が自動的に資産配分を変更し、リスクを調整します。具体的には、ターゲットイヤーまでの期間が長い間は株式の比率を高めるなどして積極的な運用を行ない、ターゲットイヤーが近づくにつれて徐々に安定的な運用にしていきます。ターゲットイヤーに達すると国内債券などを中心にリスクを抑えた安定運用を行います(図1参照)。インデックス型あるいはアクティブ型いずれでも商品化されますが、日本では大半がインデックス型です(後述)。

 

通常、投資家/加入者のリタイアメント時期をターゲットイヤーとし、「2030年ファンド」、「2040年ファンド」というように目標年次を示して構成されるファンドから、自身の年齢やリタイアメントなどの目標時期に合わせてファンドを選択できるようになっています。

自身のターゲットイヤーに合ったファンドを選択するだけで、その後は自分で資産配分を変更する手間を省くことができるため、投資初心者や現役世代などの忙しくて時間がないという方でも運用の実行が可能です。また、ターゲットイヤーにより選ぶべきファンドが決定されますので、その後の投資判断もそのための知識や経験も不要です。そこでどなたの長期資産設計にも適したファンドであると考えられているわけです。

 

多くの人の資産形成・運用に活用できるファンドではあるものの

ターゲットイヤー・ファンドは、以下の特性から多くの投資家、あるいは確定拠出年金では加入者の資産形成・運用に活用できるファンドだと思われます。

●ターゲットイヤーまでの運用期間の長短で、リスク許容度の大小並びに株式等のリスク資産の組入れ比率を決定する。

●多様な資産に分散投資をするが、大多数のファンド(特に確定拠出年金向け)では各資産で代表的指数に連動させるインデックス運用を行い、商品性の単純化と低コスト化が図られている。

しかしながら、ターゲットイヤーを選択するのみで運用方法の全てを任せてしまう投資信託であるため、投資開始前あるいは運用継続中にその時点での(市場)環境から考えて自らが望む運用状況にあるのか確認する必要があります。ターゲットイヤー・ファンドには投資初心者が投資するケースも多いでしょう。フィナンシャル・アドバイザーや委託会社あるいは確定拠出年金では運営管理機関ならびに事業主の役割は重要です。商品に関わる分かりやすい情報提供を行い投資家による確認作業をサポートすることが求められます。