「大手企業に就職すれば生涯安泰」という時代は過去のものに
それにしても、こうした大企業の大型リストラを見るにつけ思うのは、人材不足が懸念される一方で、なぜ人員削減が行われるのか、ということです。
東京商工リサーチが1月13日に公表した「2024年の上場企業『早期・希望退職募集』状況」によると、2024年中で「早期・希望退職募集」が判明した上場企業数は57社で、前年の41社を上回っています。また募集人員は合計1万9人で、これも前年の3161人に対して3倍に急増しました。
特に大手メーカーが目立つということで、オムロンが1000人、資生堂が1500人、コニカミノルタが2400人、シャープの500人、リコーの1000人と並ぶ。さらに2025年に入ってからも、ルネサスエレクトロニクスが国内外2万1000人の社員のうち5%未満にあたる人員を削減することが明らかになりました。
こうした人員削減は、通常なら赤字決算企業を中心に行われるものですが、2024年の傾向としては、直近決算において黒字を計上したにも関わらず、人員削減を発表している上場企業が、約6割を占めている点が注目されます。
これは、「大手企業に就職すれば生涯安泰」という時代が、いよいよ過去のものになってきたことを意味しています。
国内マーケットが縮小するのと同時に、海外での競争が激化している環境で企業が生き残るためには、従業員の生産性向上はもちろんのこと、世の中の変化に応じて柔軟に、事業ポートフォリオを見直していく必要があります。社内の配置転換だけで余剰人員を吸収し切れなければ、外に出すのが当たり前という時代が、いよいよ本格化していくのです。
現時点で、我が世の春を謳歌しているように見える、マイクロソフトやアマゾン、グーグルといった大手テクノロジー企業も、相次いで大幅な人員削減を発表しました。マイクロソフトは全世界で約6000人、アマゾンが約1万4000人を削減すると発表。グーグルの親会社であるアルファベットは、2023年1月から全世界従業員の6%に相当する1万2000人の人員削減計画を発表し、遂行している最中です。あれだけ稼いでいるGAFAMと呼ばれる企業にして、これだけの人員削減を行っているのです。
社会構造、競争環境が絶えず大きく変化していくなかで、企業は人員削減もやむなしであるとした場合、ひとつ大きな課題があります。それは、辞めることとなった人を速やかに、人手不足のセクターに配置転換できるようにすることです。
労働市場全体で見ると、有効求人倍率は2008年から2013年までは1倍を割り込んでいるのが普通でしたが、2025年3月のそれは1.26倍です。有効求人倍率は1倍を超えると求人者数が求職者数を上回っていて、労働市場が売り手市場であることを意味します。つまり今は人手不足なのです。
ただ、人手の足りないセクターには偏りがあるのも事実です。物流や建設現場の人手不足は言うに及ばず、介護や医療、飲食、物品販売、などは明らかに人手不足です。こうした人手不足のセクターに、うまく人材を配置転換させる社会的な理解、仕組みを整備することが求められます。