2018年、大手仮想通貨取引所コインチェックから約580億円分の仮想通貨NEM（ネム）が不正流出する事件が発生しました。社内ネットワークがマルウェア（コンピュータウイルス）に感染し、ネットワーク上の資産が奪われたとされています。

“現代の銀行強盗”とも呼ばれるこの事件を入り口に、仮想通貨や暗号資産とは何か、なぜこれほどまでに注目されるのか。その仕組みを、コア・コム研究所代表の山本御稔氏に解説してもらいます。（全4回の3回目）

●第2回：「銀行がいない世界」で暗号資産をどう守る？ サトシ・ナカモトが生み出した“信用”のデザイン

※本稿は、山本御稔著『「本当にあった事件」でわかる金融と経済の基本』（日本実業出版社）の一部を抜粋・再編集したものです。

ビットコインとは、金のようなもの

“ビットコイン”と聞くと難しいもののように感じますが、金（ゴールド）のようなものです。金は食べてもおいしくありません。重くて持ち歩きも大変です。日々の生活の役には立ちません。でも人間は、金を自然に価値あるものだと感じてしまいます。「金は、それが人々に金として認められるものである」という社会的合意があるということなのです。

人々がこう考えてしまう理由の１つとして、希少性があげられます。金は地球上の埋蔵量が限られていると言われています。その内の相当量を発掘（マイニング）されているので、近い将来、金は取れなくなると言われています。マイニングできる総量が限られているので価値があると感じるのです。

ビットコインも同じです。総発行数は2100万枚と有限性があるがゆえに希少性効果が生まれます。ただし、金のようには触ることはできないので“デジタルゴールド”と呼ばれています。金のマイニングはとても手間と費用がかかります。それゆえに発掘者（マイナー）は多額の報酬を受取ります。ビットコインでは、ブロックチェーンをつくり、保存する作業をマイニングと言います。金同様に、ビットコインのマイニングにも手間と費用がかかります。そしてマイナーはある種銀行的な役割を果たした報酬として、多額のビットコインを受取るのです。