夫に相談してみると
桃花は自分の心がざらつくのを感じた。いくら生活が厳しいとしても、200万円もの大金が必要になるものだろうか。もしかして涼子は、すでに他で借金を作っているのかもしれない。
「本当はこんなこと友達に言いたくなかった。でも、どうにもならなくて……」
どこか諦めたような表情で続ける涼子。桃花は言葉を飲み込んだまま、しばらく思案したあと、財布を開いて入っていた数万円を彼女にそっと渡した。
「お金のことだから、夫に相談してみないと……」
帰宅した宗弘に、昼間あった出来事を話した。宗弘は黙って聞いていたが、すぐに穏やかな声で言った。
「貸してあげよう。困ってる人に手を差し伸べるのは、当たり前のことだよ」
桃花は思わず声を詰まらせた。
「……でも、金額が大きいし、久しぶりに会ったばかりで……なんだか、怖いの」
宗弘はうなずいた。
「もちろん、桃花の気持ちもわかるよ。でも、彼女は桃花の友達なんでしょ? せっかく頼ってくれてるんだから、応えてあげないとさ」
宗弘の言葉には、迷いがなかった。そのまっすぐな言い方に、桃花は自分が責められているような気さえした。
「送金の準備は、こっちでしておくから、桃花は、あとで柴田さんに口座聞いておいて」
「うん……ありがとう」
話はそこで終わったものの、桃花は寝室に入ってからもずっと考えていた。
一般的な感覚からして、200万円は大金だ。いくら宗弘が資産家だからといって、それを易々と貸してしまって良いものだろうか。釈然としない気持ちはあったものの、結局桃花は借金の申し入れを受け入れる旨のメッセージを涼子に送った。
そして、健やかな寝息を立てる宗弘の顔を眺めたあと、スマホを放り出して眠りについた。
●しばらくして、桃花の懸念は的中してしまう。涼子からの返済は滞り、ついには、さらなる借金の申し出の連絡が来るまでの事態に。桃花は涼子のためを思い、さらなる借金の申し出を拒否するのだが……。後編:【「50万でも、10万でもいいから」200万円貸したはずの友人からまさかの申し出 玉の輿婚の女性とその夫がとった選択とは】にて詳細をお届けする。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。