バフェット氏が商社株を買った理由は?

足元では、紙幣のように発行数を増やすことができず市場に出回る絶対数に限りがあること、つまり有限性こそが価値の源泉であるという認識が投資家の間に広がり、金やビットコイン、資源関連など供給量に物理的・技術的な制約がある実質資産への関心が高まっています。

バフェット氏による日本商社株への投資について、当初、日本国内の報道では「世界的な投資家が日本の成長力に目をつけている」といった楽観的な見方が伝えられていました。ただ、これは極めて表面的な解釈だと言わざるをえません。

バフェット氏は、日本という国そのものやこの国の特定の商社に特別に興味を持っていたとは言えません。何しろ後に明らかになったように、彼はまず5大商社の株式発行数の5%を均等に買い、経営層との面談もアルファベット順にこなしていったのです。彼の狙いは、有限な実質資産(資源や金のように形があり、目に見えるものを「実物資産」と言いますが、実物資産と同じように有限性を有する資産をここでは「実質資産」と呼ぶことにします)である資源への投資であり、買い増した理由というのは、たまたま日本の商社株が世界で一番安い資源株であったからに過ぎないのです。現在は、各社の株式保有の9.9%まで買い増しており、25年3月に出された株主への書簡の中で、今後10%以上買い増しすることに対して各社から同意を取り付けたと、報告しています。

●第2回は【アメリカに続き、ビットコインETFの解禁も…!? 法改正を予感させる「税制改正大綱の文言」】です。(6月3日に配信予定)

海外投資家はなぜ、日本に投資するのか

 

著者名 ワイズマン廣田綾子

発行元  日経BP 日本経済新聞出版

価格 1,100円(税込)