◆「世界のベスト」に強み、一方で「オルカン」は…
比較的順位の変動が激しい松井証券の売れ筋ランキングにあってトップ2をキープしている「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」と「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、かなり強い支持を受けていることになる。両ファンドともに外国株式を投資対象としたファンドになるが、運用の特徴といえるのは「分散」だ。
「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」は世界の上場企業の中から「成長」「配当」「割安」という基準で選んだ銘柄に厳選して投資するアクティブファンド。2025年3月末時点の国別資産配分比率は、「米国」47.8%、「英国」17.3%、「オランダ」6.4%、「カナダ」4.6%、「イタリア」4.3%となっている。「米国」への投資比率が50%を下回っていることに注目したい。「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は新興国を含む世界の株式市場から時価総額の大きな銘柄群を組み入れて構成するインデックスファンドだ。3月末時点の国別投資比率は「米国」63.4%、「日本」4.8%、「英国」3.4%、「カナダ」2.7%、「フランス」2.6%などとなっている。米国への投資比率が突出しているが、「インド」1.9%など新興国市場にも資産を配分している。
この2ファンドは、米国の「相互関税」政策によって株価が大きく下落した4月上旬の下落局面において、米国「S&P500」インデックスファンドよりも下落率が抑制されていた。かつ、「相互関税の国別関税について90日間の一時停止」が発表されて株価が大きく戻す局面においても「S&P500」の戻り歩調に合わせて基準価額が回復した。その基準価額の動きには、世界の株式市場の動きを反映し、かつ、できるだけ価格変動リスクを抑制したいという投資ニーズにかなっているといえるだろう。
現在の株式市場は、米国が打ち出した「相互関税」の着地点を気にしている。個別に交渉が進んでいるということは伝えられるが、具体的に二国間交渉が決着したというニュースはまだない。このため、トランプ大統領の姿勢が強硬なのか、柔軟なのかもよくわからない状況だ。もし、強硬な姿勢を崩さずに各国との個別交渉が不調に終わった場合は、米国や米国企業が世界経済のグローバル・サプライチェーンから外されることもあり得る流れになっている。世界のGDPの過半を占める米国経済をいきなり外すことは現実的ではないにしても、徐々にでも米国を省いた経済圏ができてくれば、相対的に米国の影響力は弱くなり、世界経済における米国の地位は低下する。そのような将来が開けてきた場合は、「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」はアクティブファンドとして柔軟に投資先を組み替えていくことができる。同ファンドが人気トップにあるのはアクティブファンドの柔軟性に対する評価だろう。
その点、インデックスファンドである「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は新しい世界秩序が成立するようなことになっても、それを後追いするようなポートフォリオの変更とならざるを得ない。アクティブファンドに比べるとパフォーマンスの劣化は避けられない。今のところは、米国が常識的な妥結点を見いだして世界経済の大幅な枠組み変更はないだろうという前提で投資家は動いているようにみえる。ランキング上位に並ぶファンドには米国株への投資を主体にしたファンドも少なくないのは、多少の混乱はあっても引き続き米国が株式市場や世界経済の中心に居続けるだろうとの見通しがあると考えられる。その見通しを変更せずに済むかどうかは、今後の関税交渉の結果を待って判断するしかない。