業績好調も株価が下がる理由は? 中国向け半導体規制が逆風

業績は好調ですが、冒頭のとおり東京エレクトロンの株価は下落傾向です。なぜ株式市場で売られているのでしょうか。背景には米国による対中規制があるとみられています。

実は、株価が下落しているのは東京エレクトロンだけではありません。半導体関連銘柄は、このところ全体的に弱い相場が続いています。

【主な半導体関連銘柄の株価騰落率(2024年6月末~2025年3月末)】

・東京エレクトロン:-42.4%
・アドバンテスト:+0.73%
・ルネサスエレクトロニクス:-33.9%
・ディスコ:-51.0%
・レーザーテック:-64.9%
・SCREENホールディングス:-33.8%
・(参考)TOPIX:-5.4%

低迷のきっかけとされるのが、半導体の対中輸出規制に関する報道です。先端半導体製造装置を中国に輸出しないよう、米国が同盟国に求めたという内容でした。東京エレクトロンを含む半導体セクターは、報道が伝わった2024年7月以降に下落傾向を強めます。

米国の中国への対決姿勢は明白です。第1次トランプ政権下では半導体などで追加関税を課し、次のバイデン政権もこれを引き継ぎます。2025年1月に発足した第2次トランプ政権も、再び半導体などで新しい関税を導入する方針です。これらは中国の半導体産業への打撃となり、生産に悪影響を及ぼすと考えられます。

半導体製造装置にとって、中国は主要な市場の1つです。先端半導体向けは韓国や台湾、欧米が中心ですが、非先端を含めた市場の大きさは中国が世界トップクラスの規模を持ちます。東京エレクトロンも地域別売上高は中国向けが最大です。

【東京エレクトロンの地域別売上高(2024年3月期)】

・日本:1850億円
・北米:1681億円
・欧州:1194億円
・韓国:2845億円
・台湾:2055億円
・中国:8133億円
・その他:548億円

出所:東京エレクトロン 有価証券報告書

米国の規制に伴い、中国は半導体の内製化に取り組んでいるとみられます。このためか、近年は半導体製造装置の中国向け販売が伸びています。しかし、米国の対中規制は不透明で、さらなる規制強化も否定できません。足元は中国で販売が増加していますが、マイナス影響が上回る可能性もあるでしょう。

こうした要因が株式市場で嫌気され、投資家は半導体関連銘柄へ資金を投じにくい状況になっていると考えられます。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)