償却費と減損で減益続く 今期は当初に増益を見込むも、一転して減益を計画

最後に業績を確認しましょう。

アステラス製薬は近年、強い減益傾向にあります。主要製品で特許切れが相次いだほか、開発中の製品でもたびたび減損が生じました。減損は主要なもので2021年3月期に890億円、2024年3月期は563億円を計上します。

特に2024年3月期は、米アイベリック・バイオ社の買収で無形資産の償却費が2.5倍に増加したことも重く、営業利益は前期比80%減と大幅に悪化しました。

 
出所:アステラス製薬 決算短信および有価証券報告書より著者作成
 

減損リスクは今期(2025年3月期)も顕在化します。第3四半期に主要な製品などで1805億円を計上し、累計の営業利益は225億円の赤字(前年同期は741億円の黒字)に転落しました。

これを受け、通期の見通しも下方修正します。期首で前期比88.1%増を見込んでいた営業利益は、同56.9%減と一転して減益へ見直されました。

【アステラス製薬の業績予想(2025年3月期)】

・売上高:1兆9000億円(+18.5%)
・営業利益:110億円(-56.9%)
・当期利益:140億円(-17.9%)
・純利益:140億円(-17.9%)
※()は前期比
※同第3四半期時点における同社の予想

出所:アステラス製薬 決算短信

今期はもともと大幅な回復を予定していましたが、翌2026年3月期以降に持ち越される見通しです。

なお、アステラス製薬はコアベースの業績を開示しています。コアベースは、減損損失や固定資産の売却損益といった特定の収支を除外して開示するものです。今期からは、さらに無形資産の償却費も除外となりました。コアベース営業利益は、通期で前期比33.6%増の3700億円を予定します。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)