医薬品株はなぜ「減損」が多い? ビジネスモデルを確認
理解を深めるため、医薬品メーカーのビジネスモデルを掘り下げてみましょう。
医薬品メーカーのビジネスは開発と回収のサイクルです。開発で無形資産を積み上げ、承認を得られれば販売で回収に入ります。積み上げた無形資産は、償却費として利益を圧迫します。つまり、償却費を上回る売り上げが医薬品メーカーの利益となります。
アステラス製薬の場合、2024年3月期は無形資産の償却費として1154億円を計上しました。米アイベリック・バイオ社の買収で無形資産(アイザーヴェイ)を取り込んだこともあり、償却費は増加傾向です。主要な無形資産の残存償却期間は、期末時点で7~13年となっています。
【アステラス製薬の主な無形資産(2024年3月期)】
・アイザーヴェイ:8970億円
・ベオーザ(フェゾリネタント):941億円
・ゾルベツキシマブ(ビロイ):640億円
・AT466:540億円
出所:アステラス製薬 有価証券報告書
なお、無形資産は定期的な償却以外に減損で処理されることもあります。減損とは、無形資産の全額または一部を一度に取り崩す手続きです。販売が想定より伸びないと判断されたときや、開発を中止したときなどに減損が実施されます。
減損は損益計算書に損失として現れます。アステラス製薬は2024年3月期に無形資産の減損として638億円を認識しました。長期に取り崩す償却と異なり、減損は一括して処理されることから、損益には大きな影響を与えます。
新薬の開発に取り組む医薬品メーカーにおいて、減損は珍しくありません。アステラス製薬に限らず、多くの創薬メーカーは減損を繰り返しながら医薬品を開発しています。背景には承認までのハードルの高さがあるとみられます。このため、業績の変動は大きくなりやすい傾向です。