日本経済に広がる「ファンド金融」の可能性
これらのファンド(プライベート・キャピタルファンド)は投資家の視点から見れば「オルタナティブ投資」として分類される。ただしオルタナティブ投資にはヘッジファンドも含まれるが、ヘッジファンドは主に上場市場において空売りやレバレッジを駆使し、利益を追求するものである。未公開企業に直接資金を投融資する「ファンド金融」とは性格が大きく異なる。
ところで、「フィナシー」の読者の多くが「投資信託」を通じて上場株や公募社債に投資しているだろう。皆さんが投資している投資信託も広義の「ファンド」の一種であり、直接金融の重要な担い手である。しかしこれも未公開企業への直接的な資金提供を行う「ファンド金融」とは区別されるべきであろう。
ファンド金融に投資を行う投資家は、間接的に未公開企業への資金供給に貢献することになる。これにより、上場企業や大企業だけでなく、広く多様な企業に資金が行き渡ることが期待できる。特に中小・ベンチャー企業など、従来型の金融機関からの資金調達が難しい企業にとっては、成長機会が大きく広がることになる。
実際に米国では、多くのファンドがベンチャー企業のイノベーションや新規事業創出を促進し、また中堅企業の新陳代謝を進めることで、新たな雇用や産業の創出に寄与している。
日本でも「ファンド金融」が普及すれば、企業にとって資金調達の選択肢が広がるだけでなく、投資家にとっても新たな投資機会となり、経済全体や社会の活性化につながる可能性が高い。近年では、日本からも個人を含む多くの投資家が海外のプライベート・キャピタル投資を積極的に拡大し始めている。この動きが日本国内への投資にも広がり、日本の金融システムにおいても、本源的な資金循環を生み出す「ファンド金融」が拡大することを期待したい。