社会課題を解決する企業に投資する、インパクトファンドを運用することの意味
コモンズ投信は昨年10月より、丸井グループのtsumiki証券でのみ販売する公募インパクトファンド(*)として、「まあるい未来共創ファンド cotocoto」の運用を開始しました。
プレスリリース:https://www.commons30.jp/customer/5105/
このファンドは丸井グループが掲げるインパクト(解決したい社会課題)に対して、事業を通して貢献できる企業に投資を行う、という点で、これまでのファンドにないユニークな特徴があります。
このファンドそのものについての詳細な説明は前述のプレスリリースをご参照いただきたいのですが、今回は、インパクトファンドを運用するにあたっての想いをお伝えさせていただければと思っています。
まず、インパクトファンドはインパクトの創出を意図するものではありますが、だからといってリターンを無視するものではありません。「ファンドのパフォーマンスとしてはマイナスであっても、社会に良いことをしているからそれでいいですよね」、ということは全く考えていません。
実際、投資先企業の選定にあたっては、「コモンズ30ファンド」及び「ザ・2020ビジョン」における投資ユニバース(投資先の候補となる企業群)がベースとなっています。両ファンドで投資していない企業であっても、少なくともその候補になっているということであれば、将来的な企業価値の向上及び株価パフォーマンスに対して、我々としては一定の自信は持っているものとご理解いただいて差し支えありません。
一方で、そうした企業群を投資対象とすることで、本当にインパクトを創出できるのか、すなわち社会課題の解決に資することができるのか、という疑問を感じられる方もいらっしゃるかもしれません。この点に関しては我々も非常に留意しており、一社一社の投資先企業に対して、「ロジックモデル」というフレームワークを作成して、各企業の事業内容と社会課題の対応状況について確認をしつつ、それを各企業にも提示しています。
その上で、「御社の事業は、このような社会課題に対して、こういった点で貢献できると考えています。つきましては、社会課題解決に向けた貢献について定量的な開示を行い、それについての議論をさせていただけますか」ということをお伝えし、それにご納得いただけた企業にのみ投資をしています。
非常に手間のかかるプロセスではありますが、従来の企業との対話とは全く違った切り口になりますので、こうした対話を行うことによってその企業が新たな「見えない価値」に気づくこともありますし、これを可視化することによって企業価値の一層の向上に繋がり、結果として既存ファンドのパフォーマンスも向上するのではないかと期待しています。
では、どれぐらいの企業がこうした対話に応じてもらえるのか、というと、現状ではまだこうした対話ができる体制が整っている企業のほうが少ないというのが現実だと思います。ヘルスケアや資源のリサイクル、再生可能エネルギーといった直接的でわかりやすい事業を有している企業であれば対応はさほど難しくないかもしれませんが、例えば、インフラ企業や部品・材料メーカーですと、社会や顧客に必要とされていることは間違いなくても、どのような社会課題の解決に貢献しているのか、ということについて明確に示せない場合も多く、そこは我々にとっても大きな課題であると感じています。
しかし、一社でも多くの企業に、インパクトというものを投資の尺度としている投資家がいることを知ってもらい、実際にどのような社会課題の解決に貢献できるのか、あるいは既に貢献しているのか、ということを真剣に考えてもらうということが非常に重要だと思っており、引き続きそういった対話の機会を積極的に模索していきます。
そして、そうした地道な取り組みを進めていった先には、すべての上場企業が自然と自社のインパクトについて語っている社会があり、そうなった暁には、きっと今よりもより良い社会、まさに「今日よりもよい明日」が実現できているはず、という大きな野望をもって、このファンドの運用に取り組んでいきます。
*:インパクトファンドとは
インパクト投資は、財務的(投資)リターンと並行して、測定可能かつ社会的・環境的にポジティブな変化や効果を同時に生み出すことを意図する投資行動をするファンドを指します。インパクト投資では投資の結果として生じた社会的・環境的な変化や効果を意味する「インパクト」という軸を取り入れます。