ついに墓が完成

「いやぁ……広いな」

目の前にそびえる墓石を見上げながら、亮平がしみじみと言った。

「ほんとよね。でも、やっと形になったわ」

礼子は手を合わせ、改めて父の眠る場所を見つめた。

500万円弱という思わぬ遺産と、葬儀代に充てる予定だった分のお金を足して、礼子たちは1200万の墓石とはいかないまでも、この広大すぎる墓地に合う墓を建てた。

結果的に、程よく立派でありながら、決して偉人の墓と間違われることはない絶妙なバランスになったと思う。

「ねぇ、お父さん。広すぎるお墓、ようやく形になったよ」

礼子は墓前に向かって語りかけた。返事はないが、豪快に笑っている父の顔が目に浮かぶような気がした。

「それにしてもお義父さん、なんでこんな広い区画を買ったのかね」

「さあねぇ。狭いよりはいいと思ってたのか、それとも何か壮大な計画があったのか……」

父がこの墓地をどんな気持ちで購入したのか、結局のところ分からない。

でも、少なくとも「お前たちに迷惑はかけない」と言っていたのだから、父なりに家族のことを考えていたのだろう。

結果として、その考えはだいぶズレていたけれど。

礼子はふっと微笑みながら、手を合わせた。

「でも、まあ……これもお父さんらしいのかもね」

そう言うと、亮平も「そうだな」と肩をすくめながら笑った。青空の下、静かに吹く風に線香のにおいが香る。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。