「ファブレス」型のビジネスモデル

これは、エヌビディアが量産工場を持たない「ファブレス」型のビジネスモデルを採用しているためです。エヌビディアが行なっているのは半導体の開発や設計であり、その製造はTSMCのようなファウンドリに委託しています。そのため、有形固定資産の割合が非常に小さくなっているのです。

なお、無形固定資産(のれんと無形資産の合計)が55億4,200万ドル計上されていますが、そのうち44億3,000万ドルがのれんで占められています。

これは主に、イスラエルで高速ネットワーク半導体のチップなどを手掛けるメラノックスを2020年4月に買収した際に計上されたものです。こうしたネットワーク関連の部品事業はAI向けのデータセンターを構築するうえで不可欠の要素だといわれています(2020年8月31日付日経産業新聞)。

ゲーム向けからAI向けのGPUへのシフトを進めてきたエヌビディアの戦略が、買収に伴うのれんにも反映されているといえます。

続いて、B/Sの右側に目を転じると、流動負債が106億3,100万ドル、非流動負債が121億1,900万ドル計上されています。

これらの負債には、合計で108億2,800万ドルの有利子負債(借入金とオペレーティング・リース負債)が含まれていますが、流動資産における現金及び現金同等物と有価証券の合計額が259億8,400万ドルであることを踏まえると、エヌビディアは実質無借金経営です。

資本は429億7,800万ドルで、自己資本比率は65%と高い水準にあります。

以上をまとめると、エヌビディアのB/Sには、ファブレス型のビジネスモデルを採用しているために有形固定資産の割合が小さい、ゲーム向けからAIデータセンター向けのビジネスへのシフトを視野にM&Aを行なったことによるのれんが計上されている、といった特徴が表れています。

会計指標の比較図鑑

 

著者名 矢部 謙介

発行元    日本実業出版社

価格 1,980円(税込)