東証は、2023年3月から、プライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象に、「資本コストや株価を意識した経営」の推進をお願い(いわゆる「東証要請」)しています。
東証は、2024年11月21日、10月に開催されたフォローアップ会議をふまえ、上場企業に自社の取組みを点検・ブラッシュアップする際の参考としてもらうため、新たに「投資者の目線とギャップのある事例」を取りまとめるとともに、2024年2月に公表した「投資者の視点を踏まえた対応のポイントと事例」について、ポイント・事例を拡充するなどアップデートを行っています。
今回は、これらの内容をご紹介します。
●前編:【東証市場改革、プライム市場の89%が取り組みに着手! 重視されたポイントとは】
ポイント1 投資者の目線とギャップのあるポイントと事例
「資本コストや株価を意識した経営」の要請後、既に多くの上場企業で開示が進んでいますが、実質面の改革は途上にあり、企業の対応状況は大きく3つのグループに分けられています。
プライム市場においては、企業群2(取組みの開示は行っているものの、「今後の改善が期待される企業」)がボリュームゾーンとなっており、これらの企業の対応には投資者の目線とズレた取組みとなっている、投資者とのコミュニケーションを十分に行えていないなどの課題があると考えられています。そこで東証は、このような企業群2に対して特に焦点を当てたサポート策として、既に「投資者の視点を踏まえた対応のポイントと事例」を公表しています。
そして今回は、投資者が高く評価している開示例だけでなく、逆に「投資者の目線とギャップのあるポイントと事例」を2024年11月に公表しました。
このようなギャップ事例が提示された狙いは、企業が自社のどこに課題やギャップがあるのかを入り口に、投資者の視点を踏まえたポイントやそのポイントが押さえられた事例集をセットで理解していく方が、企業の検討がより具体的に進みやすいのではないかというものです。
これと併せて、今回「ポイント・事例集の使い方ガイド」も公表されており、まずは「投資者の目線とギャップのあるポイントと事例」で取組みの状況に応じて生じやすいギャップを自社の取組みと見比べ(Step1)、該当するものや気になるギャップがあれば、各ギャップに対応する「投資者の視点を踏まえた対応のポイントと事例」において、機関投資家に評価されている取組みや開示例を参照しながら、取組みの検討やブラッシュアップを行う(Step2)という、ポイント・事例集の使い方が紹介されています。
【ポイント・事例集の使い方ガイド】
ギャップ事例は、各事例が実際の開示を元に加工したものとなっており、企業の検討状況に応じて3つのレベルを設定し、具体的にどのような観点でズレが生じてしまっているのか、ズレを解消するためにどのように改善すればよいのか、機関投資家が日本企業によく指摘を行う10項目をまとめています。
【レベル別ギャップの概要】