初の最終赤字から回復、足元は減益 今期は上期好調も下期は金属が伸び悩みの予想
次に三菱商事の業績を解説します。
直近10期を振り返ると、2016年3月期の最終赤字が目を引きます。純損失は三菱商事の創業以来で初のことでした。資源市況の悪化に伴う減収や資源関連資産の減損などから赤字となりました。
以降の業績はおおむね拡大傾向です。純利益は2023年3月期まで2期連続で過去最高を更新しました。市況の上昇と取引数量の増加が収益を押し上げ、利益に貢献しました。
一方、翌期の2024年3月期は減収減益となっています。市況の下落から収益や利益が減少しました。減益は不動産運用会社の売却益のはく落や、化学品の製造事業および海外食品事業における減損なども影響しました。
今期(2025年3月期)は純利益のみ業績予想を開示しています。前期比やや減益となる9500億円の計画です。
【三菱商事の業績予想(2025年3月期)】
・収益:非開示
・純利益:9500億円(-1.5%)
※()は前期比
※同第2四半期時点における同社の予想
出所:三菱商事 決算短信
今期は中間決算まで公表しています。純利益は前期比32.6%増の6181億円、通期予想に対する進捗率は65.1%となりました。けん引したのは金属資源と食品産業、S.L.C.です。
金属事業は炭鉱の売却益、食品産業は保有していた日本KFCホールディングス株式などの売却益、S.L.C.は子会社(ローソン)の持分法適用会社化に伴う再評価益が利益を押し上げました。
【三菱商事のセグメント純利益(2025年3月期 第2四半期)】
・地球環境エネルギー:946億円(+5%)
・マテリアルソリューション:369億円(-16%)
・金属資源:1957億円(+46%)
・社会インフラ:1億円(-99%)
・モビリティ:550億円(-16%)
・食品産業:604億円(+141%)
・S.L.C.:1563億円(+127%)
・電力ソリューション:-66億円(前年同期は83億円の黒字)
※()は前年同期比
出所:三菱商事 決算説明会資料
純利益の進捗は順調ですが、全体の通期予想は据え置かれました。ただしセグメント純利益は見通しが修正されています。
上方修正されたセグメントは地球環境エネルギーと食品産業です。地球環境エネルギーは液化天然ガス事業が好調で、想定より上振れる予想です。食品産業は中間までに計上した保有株式の売却益が通期でも寄与します。
一方、下方修正されたセグメントはマテリアルソリューションと金属資源です。マテリアルソリューションは取引数量の減少を見込みます。金属資源は中間まで好調だったものの、原料炭の市況低迷が続いており、下期では伸び悩む想定です。