株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジでコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。

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T:最近、首都圏を中心とした強盗事件の報道が多く見られます。何となく日本の治安が悪化しているのではないかと感じますが、実際に悪化しているのでしょうか?

神様:日本の治安を考えるには、2つの見方があります。一つは、刑法犯認知件数や検挙率による客観的なデータです。警察庁によると、2023年の刑法犯認知件数は70万3,351件となり、2022年と比べて大きく増加しました。

T:それでは、やはり悪化しているのですね?

神様:一概にそう言い切ることはできません。刑法犯罪の認知件数は、2002年の285万3,739件をピークに、2021年まで19年連続で減少していました。特に、2020年、2021年についてはコロナ禍もあり、行動制限による人流の減少が認知件数の減少にも影響しています。一方で、2022年からは増加に転じていますが、行動制限の緩和等による人流の回復や、経済活動の回復による影響も考慮する必要があるでしょう。

 

T:ということは、コロナ禍前の2019年と比較すれば良いわけですね。

神様:そういうことになりますね。警察庁が公表している2019年の刑法犯の認知件数は74万8,559件です。これは、それまで戦後最少であった前年2018年を下回る件数でしたから、この2019年よりもさらに少ない2023年が「治安が悪化している」ことを示す顕著な特徴を持っているとは言えないでしょう。

T:確かにそうですね。そうなると、来年2月の2024年犯罪認知件数の公表が気になります。

神様:もう一つの見方として、「体感治安」という言葉があります。これは、警察庁が国民にアンケート調査を行い、「日本の治安はよいと思うか」、「ここ10年で、日本の治安はよくなったと思うか、悪くなったと思うか」を聞いた結果を示したものです。2023年の調査結果では、「日本の治安はよいと思う」と回答した人は全体の64.7%であったのに対し、「(ここ10年で)悪くなったと思う」と回答した人は全体の71.9%を占めたことがわかりました。悪くなった要因として想起する犯罪については、オレオレ詐欺(特殊詐欺)などの詐欺、無差別殺傷事件、サイバー犯罪、児童虐待などが挙げられています。

T:なるほど。オレオレ詐欺(特殊詐欺)と言えば、主犯・指示役を中心とした役割分担など、最近多発している強盗犯罪と類似する特徴があります。こういった新しい犯罪への対策強化が急がれますね。

神様:刑法犯罪件数が増加するにつれて刑法犯罪の検挙率は悪化していますから、犯罪の検挙や抑止に役立つツールが必要とされています。そういう意味でも今、セキュリティカメラの重要性が高まっています。

T:セキュリティカメラとは、防犯カメラのことですか?

神様:昔のいわゆる防犯カメラよりもハード面・ソフト面ともに進化しています。インターネットを使った遠隔操作システムやクラウド録画システム、赤外線センサーなどの人感センサー技術、画像認識AIを活用した技術などを、小さな機器で誰でも手軽に扱えるようになっていることが特徴です。

T:強盗犯の撃退に、セキュリティカメラ需要が急増しそうですね。

神様:世界的にも需要が見込まれています。セキュリティカメラの世界市場規模は、2023年で69億5,000万ドルでした。今後は年平均で6.2%の成長が見込まれ、2032年までに119億ドルに達すると予測されています。

 

T:自然災害等の被災地での活用も進んでいるとの報道を見たことがあります。防犯だけでなく、多様な活用方法がありそうです。

神様:ビジネスにも活用されています。IoT機器とも連携し、作業現場の遠隔監視、医療・介護施設での見守り、小売店来店者の属性分析などのマーケティングなどは良い例でしょう。

T:個人情報の適切な活用などの注意すべき点もありますが、防犯、ビジネスの双方で今後さらに需要の高まりが見込まれます。関連企業のさらなる成長が期待できそうです。