<前編のあらすじ>

現在36歳の氏家昴光(うじいえ・すばる)さん(仮名)は、大手家庭用品メーカーで研究職をしています。奥さんとは社内結婚。10歳になる娘さんもいます。実直な姿とは裏腹に、氏原さんが育ったのは「バブリー」な家庭でした。

折に触れ海外旅行に出かけ、宿泊するのはいつも高級ホテル。父親が完全にリタイアした後も退職旅行で地中海やアフリカを周遊する豪華客船に乗るなど、氏家さんの両親の贅沢な暮らしはなりを潜めることはありませんでした。

そんな中、氏家さんの父親は新型コロナ感染症で命を落とします。それでも母親の旺盛な消費欲は衰え知らずで……。

●前編:【退職金6000万円に年金は月50万円…羨望の贅沢老後が一転、バブリーな夫婦が迎えた「まさかの結末」】

父の公的年金、企業年金、月に50万以上の収入があるはずが

私は中堅企業で役員を務めた父、結婚前までホステスだった母との間に生まれ、下に弟が一人います。日本人は貯蓄性向が強いと言われますが、私の両親は真逆で、むしろかなり消費に前のめりなタイプでした。

子供の頃から、両親が家や車、洋服や服飾品、旅行やゴルフと派手にお金を使うのを見てきました。それもあって、私自身は贅沢品にあまり興味が持てず、今はメーカーで研究職をしています。一方、派手な暮らしにどっぷり浸かった弟は、学生時代はホストクラブでアルバイトをし、その後も飲食店を経営しながら“富裕層もどき”の生活を送ってきました。

少しばかり気になっていたのは、20年以上前に父が定年退職をした後も、両親には派手な生活を改めるような気配がなかったことです。むしろ、豪華客船のクルーズに出かけたり、歌舞伎やオペラに通い出したりと、自由な時間が増えた分、さらに金のかかる趣味を覚えたように見えました。

といっても、私はその両親に修士課程までの学費を出してもらったわけですし、結婚後、マンションを購入する際にも特例税制を使って1000万円の援助を受けているので、偉そうなことは言えません。

ただ、父からは会社から6000万円を超える退職金が支給されたこと、公的年金や企業年金、民間保険会社の個人年金を合わせると月額50万円以上の収入があることを聞かされ、それだけお金があるなら大丈夫だろうとたかを括っていたのです。

実際、父の存命中は大きな問題が起きることはありませんでした。しかし、4年前に父が新型コロナウィルス感染症で亡くなり、事情が変わりました。