米商務省経済分析局(BEA)は9月26日に2024年第2四半期のGDP(確報値)と同時に年次改定を発表した。年次改定は国民所得・生産勘定(NIPA)や産業経済勘定(IEA)を含む国民経済計算(NEA)の年次更新に伴い、毎年この時期に過去のデータが遡及改訂されるもので、2024年は2019年第1四半期から2024年第1四半期が対象となる。年次改定により、国内総生産(GDP)、産業別GDP、国内総所得(GDI)や関連統計(個人消費支出、個人所得、企業投資など)が修正される。
今回の年次改定では、実質GDPの水準が2019年から2023年の全ての年で上方修正され、2023年の改定幅は2017年基準の実質ベースで2,942億ドルとなった(図表1)。上方修正の主な要因は実質個人消費が同期に1,956億ドル上方修正されたことが大きい。また、成長率(前年比)も2020年の横ばいを除いて上方修正された。実際に2022年が改定前の1.9%から2.6%に0.6ポイント、2023年も2.5%から2.9%に0.4ポイント上方修正された。このため、コロナ禍からの景気回復は当初の想定よりも力強かったことが示された。
実質GDIは年次改定に伴い2023年の水準が5,110億ドル上方修正された。これはGDPの改定幅を上回る。上方修正の結果、2018年から2023年の平均成長率は改定前の前年比1.8%から2.2%に0.4ポイント引き上げられた。
一方、本来、三面等価の法則から生産面からみたGDPと所得面からみたGDIは理論的に一致するはずだが、実際には乖離がみられる。特に、2023第3四半期以降は実質GDPと実質GDIの乖離幅が実質GDP比で2%を超える大幅な乖離となっていた(図表2)。このため、GDIに比べて高い伸びを示していたGDPが経済実態を過大評価しているとの指摘が一部にあった。しかし、今回の年次改定でGDIが大幅に上方修正された結果、両者の乖離は2024年第2四半期に0.3%まで大幅に縮小した。このため、GDPが過大評価されていた訳ではなく、むしろGDIが過小評価されていた状況が示されて堅調な経済状況が確認された。
さらに、今回の年次改定では2022年以降の個人所得も遡及改定され、2024年第2四半期の改定幅が7,820億ドルの大幅な上方修正となった。また、個人所得の上ぶれを背景に可処分所得の改定幅が7,607億ドルとなった一方、個人消費の改定幅が2,828億ドルにとどまった結果、2024年第2四半期の貯蓄率は改定前の3.3%から5.2%に大幅な上方修正となった(図表3)。改定前の貯蓄率は2008年以来の水準となっていたことから、所得対比で消費余力が限定的で、個人消費の持続性に懸念が生じていたが、今回の改定によって当初想定されていたよりも堅調な個人消費の持続可能性が高まったと言えよう。