データで読み解く健康と高齢者の関係性
さらに詳しい情報を知りたい方に向けて、ここで健康と高齢者の労働に関するデータをいくつかご紹介します。
・「Employment in old age and all-cause mortality: A systematic review」(Hiroshi Murayama, Mai Takase, Saya Watanabe, Keiko Sugiura, Isuzu Nakamoto, Yoshinori Fujiwara, Geriatrics Gerontology, First published: 04 August 2022)
本研究は、高齢期(60歳以上)の就労と全死亡率の関係を検討することを目的としています。高齢になっても働くことは死亡リスクの低下と関連しており、高齢者の健康の促進と維持につながることが分かりました。
・「Effects of the Change in Working Status on the Health of Older People in Japan」(Ushio Minami,Mariko Nishi,Taro Fukaya,Masami Hasebe,Kumiko Nonaka,Takashi Koike,Hiroyuki Suzuki,Yoh Murayama,Hayato Uchida,Yoshinori Fujiwara, PLOS ONE Published: December 3, 2015)
和光市で 1768人の参加者が2年ごとに3回にわたる調査質問票に回答した調査です。その結果、フルタイムの仕事からの退職は65歳以上の高齢者の精神的健康と高次の機能能力を悪化させるのに対し、パートタイム労働はこれらの影響を和らげることができたと報告されました。
・「Employment and health after retirement in Japanese men」(Shohei Okamoto, Tomonori Okamura, Kohei Komamura, Bulletin of the World Health Organization. 2018;96(12):826-33.)
東京都健康長寿医療センター研究所が調査主体である「長寿社会における中高年者の暮らし方の調査(JAHEAD)」の1987年~2002年(第1回~第6回)の調査において、60歳以上の就労がその後の健康状態に与える影響を、傾向スコア解析を用いて推計したものです。その結果、高年齢期の就労は、非就労者と比較した場合に、糖尿病で約6年、脳卒中で約3年、認知機能と死亡で約2年、発生(アウトカム)に差がついたことから、寿命と健康寿命を延ばす効果があることが示唆されています。
これらの結果を見ても、働くことで健康を維持でき、社会との関わりを持てることは大きなメリットです。
ただ注意しなくてはいけないことは、高齢になるにしたがって体力が落ちてくるので、身体を酷使する仕事でなく、自分の体力に合った働き方に移行しなくてはいけないという点です。それにはフルタイムでなく週に数回、数時間の働き方を選択し、オンラインでの仕事を検討するのも良いでしょう。
また自分に合った仕事という意味では、自分の好きなことをするのが長続きの秘訣(ひけつ)になります。加えて仕事のやり方を工夫し改善することが、実は自己成長につながっていることを忘れてはいけません。仕事に自分の役割を見いだし、それに取り組む姿は何歳になっても素晴らしいことです。
働くことで収入を得ながら幸せになる、働ける間は働くということは、定年後のファイナンシャル・ウェルビーイングを実践する1番の近道になるでしょう。