働くことで運動量や人との交流も増やせる

一方、定年後だからこそ気を付けないといけない、大きな注意点があります。それは若い頃(50代まで)には意識していなかった「健康」についてです。

定年前後になってくると、徐々に身体の不調や体力の衰えを感じてきます。健康診断でも再検査の項目が増え、生活習慣病を意識せざるを得なくなります。

そこで、かねてより病気の予防に有効と言われている「運動」「脳機能の活性化」の実践が重要になってくるのです。

定年前は通勤が運動になり仕事でもいろいろな人と話すのでそれほど問題になりませんが、定年後は自宅にいる割合が多く、運動量も減り、人と話す機会もめっきり減ってきます。運動しないといけないと分っていても、また人との交流もしなくてはいけないと分かってはいても、ついつい億劫になるのが年を取るということなのです。

こういった現状から考えて、健康維持に必要と言われる「運動」「脳機能の活性化」に対し、「働く」ことが有効となるでしょう。

シニアが労働で得られる意外な恩恵7つ

働くことは想像以上にいろいろなメリットがあります。特に私が実感しているものを項目ごとに7つにまとめてみました。

【お金のメリット】

①年金に加えて多少なりとも収入があるので生活に余裕が持てる

【健康に対するメリット】

②規則正しい生活のリズムができる
③頭を働かせることで、物忘れへのリスクに備えられる
④適度な疲労があり、睡眠が深くなる
⑤自分のペースで働けるので、ストレスがたまらない

【孤独予防のメリット】

⑥仕事関係の人との会話があるので、孤独感から逃れられる
⑦自分は人に役立っている、という自己有用感が持てる

このように働くことで多くのメリットを得られます。

100歳を超える人が多く暮らす世界の5カ所の長寿地域のことを「ブルーゾーン」と呼びます。どの地域の長寿者もよく歩き体を動かしていて、長寿者は農作業をするなどよく働いています。日本においても農業をされているシニアの方はお米作りや畑仕事で働かれていて、お元気な姿をよく見かけます。

また「認知症になった人」と「認知症にならなかった人」を統計的に調べた研究では、認知症にならなかった人がやっている習慣として、もっとも有意差がでるのは「運動」することでした。働かないで家にいるよりは、職場に行くことで定期的に身体を動かした方が良いと言えるでしょう。