<前編のあらすじ>

長引く秋雨前線のせいで、家の中も外もじめっとした空気が続いていた。そんなある日、安美(42歳)は、中学生の息子に虫刺されのような発疹ができていることに気づく。

最初は単なる虫刺されと判断し市販の薬を塗っておいたが、治る気配は一向にない。それどころかひどくなる一方で医者へと連れていくと、ダニによるものだと判明する。

安美は一念発起して家じゅうを掃除した。本棚の裏を見ると、その壁には主婦の手には負えないような黒いカビがびっしりと繁殖していて、途方に暮れる安美だった。

●前編:「これはただの虫刺されじゃない」息子の全身に発疹が…家も家族もむしばんだ「誰にでも起こりうる原因」とは?

手痛い出費

その日の夜、安美は出張から帰ってきた夫の遼一に事の経緯を報告し、カビの状況を見せた。これには遼一もかなり驚いた様子で、本棚の裏をじっと見つめていた。

「これ、場合によってはリフォームが必要かもしれないな。下手に触らず、プロに任せたほうがいいと思う」

「やっぱりそうだよね……」

もはや主婦の掃除でどうにかなる範囲を超えているのは明白だった。翌日、安美は遼一の提案に従ってリフォーム会社に連絡し、壁のカビ取りと防カビ対策の相談をすることにした。家に来てくれた業者の男性は、問題の壁を見るや腕を組んでうなり、それから安美に向かって言った。

「これは相当やられてますね、奥さん。ボードも取り換えかなぁ」

「あの、そんなにひどいんでしょうか……?」

業者は不安げに眉を寄せる安美を振り返ると、簡単に壁の診断結果を説明してくれた。説明によると、カビは壁の表面だけでなく、壁紙の裏側にまで侵食している可能性が高いとのことだった。

見積もりの結果、防カビ剤塗布と壁紙張り替えでリフォーム費用は計20万以上。万が一、カビが壁内部まで浸食していて、石こうボードごと交換することになれば、おそらく30万以上になるだろうとのことだった。もちろん払えないような金額ではないが、決して安くはない手痛い出費だ。しかしこうしているあいだにもカビは繁殖し、ダニは息子の肌を荒らしているかもしれない。そう思うと、うだうだ迷っているわけにもいかなかった。

「……わかりました。リフォーム、お願いします!」