2024年7月に公表された公的年金の健康診断とも言われる「財政検証」について、2回に分けて取り上げ、1回目は「財政検証」の結果について見ていきたいと思います。

今回の財政検証の内容は5年前に比べて改善を見せており、女性や高齢者の厚生年金加入者が今後増加していく見込みであることや、最近の世界的な株価上昇を受けて積立金の運用が好調であったことなどが背景にあるようです。

財政検証とは

2024年7月に、厚生労働省より「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し(財政検証)」が発表されました。

国民年金法及び厚生年金保険法において、政府は少なくとも5年ごとに、国民年金・厚生年金の財政に係る収支についてその現況及び財政均衡期間における見通し(財政の現況及び見通し)を作成しなければならないと定められており、今年がちょうど5年目に当たります。

財政検証では、次の5年後の財政検証までに「所得代替率」が50%を下回ると見込まれる場合には、給付水準調整の終了その他の措置を講ずるとともに、給付及び負担の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずるとしています。

この所得代替率とは、現役世代の税引き手取り収入に対して、どれくらいの年金額が支給されるかという比率です。例えば、税引き後の年収が400万円であれば、200万円の年金額が維持されるということです。

所得代替率50%維持の根拠になっているのは、平成16年に施行された国民年金法附則第二条において、『会社員である夫の老齢基礎年金と老齢厚生年金、専業主婦の老齢基礎年金を合計した金額が、夫の手取り収入に対して50%を上回る給付水準を将来にわたり確保する』と定められているためです。 つまり、会社員の夫と専業主婦の妻というモデル世帯で40年間保険料を納めていた場合を基準にしているので、全ての人が当てはまるというものではありません。