デジタル金融資産を持つ人の過半数以上が「相続の準備は何もしていない」

ここまでの調査結果を見ると、デジタル金融資産を保有する人の多くが、その存在や口座からの引き出し方を家族に伝えていない傾向にあることが分かります。

とはいえ、いずれ相続が発生する可能性は避けられません。相続に向け、事前に準備をすることが望ましいはず。

しかし調査結果では、資産額に関わらず、「(相続の準備は)特に何もしていない」と回答した人が6割以上存在。また、「家族に引き出し方を説明している」と回答した人は2割程度にとどまりました。

相続の準備をしている人がこれほど少ないのには何か理由がありそうです。調査結果では、相続の準備をしない理由として「まだ若く健康だから」と回答した人が最多。昨今は60代以上でもアクティブに活動する人が増え、定年退職後の人生が「セカンドライフ」とも呼ばれます。将来を楽観的に考え、万が一の備えを後回しにしてしまう人が多いのかも。

また年代別では、特に60代で「準備が面倒くさいから」と回答した人が最多となりました。最近は自分の終末に向けて、財産情報や残りの人生でやりたいことなどを自由に記す「エンディングノート」も登場。法的な強制力はないものの、遺言状より気軽に自分の思いを家族や友人に伝えられるとして話題に。ただ、こうした習慣が広く根付くにはある程度時間がかかると思われるので、現状は相続の準備にハードルを感じる人も少なくないようです。

 
出所:株式会社GOODREI 「相続実態調査(2024年)」

IDは「紙で管理」が意外と多数派

「家族がデジタル資産の引き出しで困る情報」1位だったID・パスワードですが、本人はどのように管理しているのでしょうか。調査結果では、「紙(例:ふせん、メモ帳、ノート、日記)」と回答した人が最多。テキストファイルやExcelなどデータによる管理を大きく上回りました。この調査では回答者の平均年齢が61歳ということもあってか、紙による管理に安心感を覚える人が多いようです。煩雑な面もありますが、昨今のネットによる情報漏洩の多さを考えると紙による管理は意外とセキュリティ上有効かもしれません。

出所:株式会社GOODREI 「相続実態調査(2024年)」

ここまで見てきたように、デジタル金融資産の相続ではさまざまな困難が予想されます。誰か相談する人がいれば心強いかもしれません。調査では、デジタル資産の相続で困った際に相談する相手は誰かを質問。結果、「親族」と回答した人が27%と最多。次いで「金融機関」が24%と、2つの回答で半数を占める結果に。いずれもデジタル金融資産ならではの相談先というわけではないので、単にデジタル資産の相続というよりは、相続全体について相談したい相手としてイメージされていると思われます。

出所:株式会社GOODREI 「相続実態調査(2024年)」

調査概要
調査名:相続実態調査(2024年)
調査目的:デジタル金融資産の保有状況と、万一の場合の遺産相続に対する備えの状況の把握
調査年月:2024年7月
調査方法:Webアンケート調査
対象者:金融資産保有額1,000万円以上かつ40歳以上の人
回答者数:480人
回答者平均年齢:61歳
回答者男女比:男性7:女性3
調査企画・実施:株式会社GOODREI