現在、亡くなった人の15人に1人が身寄りがなく、行政機関に火葬されるといわれています。
核家族化やライフスタイルの多様化の影響もあり、家族で支え合うのが難しい時代です。たとえ、結婚し、子どもがいたとしても、一方と死別したり、子どもと疎遠であれば、いつ誰にも頼れない状況に置かれるかはわかりません。ひとりで老後を迎えると、住居の確保、介護や入院の手続き、お墓、そして遺産はどうなるのでしょうか?
「ひとり老後」を巡る課題やトラブルは日に日に関心が高まっています。そんななか、長年、この問題を研究してきた日本総合研究所シニアスペシャリストの沢村香苗氏の新刊『老後ひとり難民』が話題となっています。今回は特別に本書より、ひとり老後に陥ってしまうリスク、病院や自治体などの現場が直面する課題などをお届けします。(全4回の3回目)
●第2回:“身寄りのない人”の火葬や合祀は「自治体によって異なる」実態…遺体が3年超保管されたケースも
※本稿は、沢村香苗著『老後ひとり難民』(幻冬舎)の一部を抜粋・再編集したものです。
年間800億円近い遺産が国庫に帰属している
身寄りのない高齢者が財産を残して亡くなった場合、その遺産はどうなるのでしょうか。
その行方は、法律に基づいて決められます。まず、相続人の存在が明確でない場合、利害関係人(何らかの理由で、亡くなった方の財産の分与を求めたい人)、あるいは検察官の申し立てを受けて、家庭裁判所が「相続財産清算人」を任命します。
相続財産清算人は、本来なら相続人が行うべき「被相続人(財産を残して亡くなった人)」の財産管理を代行する役割を担います。相続人が不在であったり、相続放棄をした場合、財産を管理する人がいなければ、債務返済が滞ったり、不動産の管理不全などの問題が生じるおそれがあるので、相続財産清算人が適切に財産を管理して清算することになっているのです。
相続財産清算人は、預金や不動産などの相続財産を調査し、債務の支払いや財産の管理を行います。また、相続人が不明な場合は、官報を通じて相続人を捜索します。
これらの手続き後に残った財産については、家庭裁判所の審判を経て、特別縁故者が相続する場合がありますが、最終的に残った財産については、国庫に引き渡されることになります。
2023年にNHKが最高裁判所に取材したところによれば、相続人がいないために国庫に納められた金額は、2022年度は768億9444万円となり、記録が残る2013年度以降で最も多くなったとのことです。
「自分の資産を国に持っていかれるのはイヤだ」という場合は、死後に財産が自分の意向に沿って管理されるよう、何らかの手を打っておく必要があります。